本研究は、長い臨床経験に基づく熟練した判断と技を持ったキャリア後期看護師の仕事の継続によって看護師不足の問題の解決を図ろうとするものである。今年度は、先進医療や急性期医療を提供している総合病院においてキャリア後期になってもスタッフナースとして働き続けている看護師の実践能力に焦点を当て、年齢を重ねても維持、あるいは発達していく実践能力と年齢とともに低下していく実践能力を明らかにすることを目的に質問紙調査を実施した。 質問紙は、30項目からなる自己記入式の看護実践能力を把握するための評価表を含む、13の質問項目から構成され、対象は、これまでに看護部長にインタビュー調査を行った4つの総合病院で働く55歳以上のスタッフナース60名で、44名から回答があった。2名は、年齢が基準に合わなかったために対象外とした。集計はコンピュータを使って行い、記述統計を算出した。 対象者42名は全員女性で、平均年齢は58.3歳、看護師としての経験年数は31.5年であった。看護業務を遂行するなかで年齢を重ねるごとにつらくなっていることとしては、「疲労回復」「新しい医療機器の操作」「老眼」を70%以上の人があげていた。また、実践能力の自己評価では、「今の実践に求められている能力」は、ほとんどが「維持できている」と答えているが、「専門性の追求」や「研究成果を活用して看護ケアの改善」については「維持していくことが難しい」と回答している人が多くみられた。また、仕事の継続に必要なこととしては、家族の理解と勤務状況や職場環境の調整を約70%の人があげていた。 今回の調査結果は、勤務調整や職場環境を整えることができれば、キャリア後期看護師の実践能力を活用することが可能であることを示している。現在も調査を継続しており、対象者数を増やして質問紙の信頼性や妥当性を検討し、結果を確かなものにしていく予定である。
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