研究課題/領域番号 |
24659961
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
山本 あい子 兵庫県立大学, 付置研究所, 教授 (80182608)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 災害看護 / 障害者 / ニード査定 |
研究概要 |
本研究は、障害のある人々の災害サイクルに応じた健康ニード査定のためのアジア基準の構築を目的としている。 今年度は、2011年3月に発生した東日本大震災の被災障害者に関する論文や報告から、健康や生活に関するニーズの抽出と、国際生活機能分類(ICF)に基づきニーズの分類を行った。その結果、健康や生活に関するニーズには、一般被災者と同様のニーズと、要援護者・障害者特有のニーズの二つに大別することができた。一般被災者と同様のニーズとして、ICFコードにおける「物品とサービスの入手」、「その他特定のレクリエーションとレジャー」が多く見られた。具体的には、食料品、水、ガソリン不足による物品獲得のニーズ、軽い運動や仲間と行う活動実施のニーズであった。障害者特有のニーズには、ICFコードにおける「公共の建物内の設備の利用を容易にする設計・建設用の生産品と用具/公共の建物の出入りに関連する設計・建設用の生産品と用具」、「同居者との非公式な関係」、「健康の維持増進」が見られた。具体的には、避難所がバリアフリーではないこと、避難所での人間関係に難しさが生じ、避難所に居にくくなること、薬不足、体調不良、医療チームの往診の必要性などであった。これ以外にも様々なニーズが挙げられるが、大半がICFコードにより分類することができたことから、ICFコードを基盤にニード査定の基準を構築できるのではないかという指針を得た。その一方で、情報が入らないことや避難所に行けない様々な現状などICFコードでは分類できない項目も抽出できた。これらは災害時特有な状況と思われるが、詳細が不明なことから、今後調査により基準に精錬していく必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災で被災された障害者の方々の体験や報告等の資料を入手し、情報の分析から基準構築にICFコードが利用できるのではないかという示唆を得ている。また、インタビュー調査を行う際の半構成的質問紙に追加することが望ましい項目内容についての示唆も得ている。面接調査のための研究倫理審査委員会の承認もすでに受けている。加えて、上記の東日本大震災で被災された障害者の方々の体験や報告から、調査協力を依頼する団体のリストアップも行えており、今年度の面接調査の準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
5月中旬には、リストアップしている調査協力を依頼する団体に電話で研究の説明を行い、依頼書の送付を行う。依頼書の送付等は、アルバイトを雇用することにより、随時行っていく。調査協力を得られた団体からなるべく多くの調査協力者の紹介をしてもらうことにより、依頼のための時間やインタビュー調査実施のための移動時間などの短縮を行う。 さらに、アジアで災害看護に関する研究や実践を行っている面識のある者に、メールでインタビュー方法等を送付し、インタビューを実施してもらう。ICFは世界各国共通であるため、インタビュー内容をICFコードで分類してもらい、その結果を日本の調査結果と統合することに、分析時間の短縮を図る。さらに、TV会議等を行うことにより、渡航する必要がなく、双方の都合の良い時間に会議が行えること、進捗状況の確認ができること、により研究を推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費に関しては、調査に必要な文具やUSBフラッシュメモリ等、また最新の知見を知るための本や文献の購入を予定している。 旅費においては、インタビュー調査のため、東北被災県への旅費を計上している。また、9月にタイで行われるAPEDNN会議に出席し、参加者との情報交換を予定している。さらに翌2月にフィリピンで行われるEAFONS学会では、国内の調査結果の発表を行う計画である。人件費・謝金はアルバイトの雇用と、質問紙翻訳料を計上している。その他においては、質問紙や謝礼品の郵送、TV会議回線使用料を計上している。
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