研究課題/領域番号 |
24659965
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 宮崎県立看護大学 |
研究代表者 |
小笠原 広実 宮崎県立看護大学, 看護学部, 准教授 (70318153)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | EPA / 日常生活援助技術 / 看護技術教育 / インドネシア |
研究概要 |
インドネシアにおける看護教育の教授内容を捉え、EPAで来日した看護師が日本において看護を実践する上で困難になる問題を明らかにするために、現地において調査を実施した。外国人看護師・介護福祉支援協議会の協力を得て、看護学校および看護大学に研究協力を依頼した。第1回調査では、2か所の看護教育機関の教員と、来日を希望して日本語研修を受けている看護師グループの協力を得ることができた。 文化の違いが直接ケアの質に関係すると思われる日常生活援助技術の中で、食事、排泄に関して教授されている基礎看護技術項目、および3年制と5年制の教育機関による教育内容の相違、食事や排泄介助に対する看護師の意識について調査用紙を用いた調査を実施した。さらに回答内容に関して半構成的面接を行った。その結果、インドネシアにおける技術教育について概ね現状把握ができたものの、文化の違いによる看護技術のポイントや、患者の見つめ方について、具体的な例を示し討議しなければ、違いが明確にならないことが分かった。 そこで、第2回調査では、インドネシアとの相違を予測しながら、看護技術のポイントについて習得度を測る質問項目や、脳梗塞患者への看護事例を設定して、アセスメントの視点を問う調査票を作成し実施した。さらに、「日本の看護と医療」「看護理論をもとにした看護実践」をテーマにセミナーを2回(参加者計68名)開催し、それに対する意見交換をする中で、看護観の相違を探った。現在、データの分析を進めている。これまでの結果は、看護師受け入れを行なっている病院などに定期的に送られている会報(JIAEC NEWS Vol.42.No.3) に報告書を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第1回調査において、インドネシアの看護教育課程における日常生活援助技術教育の概要と、日常生活援助をすることに対する看護師の意識について、当初予定していた内容を把握することができた。そして、日本における看護の違いを明確にするためには、同じ調査内容で調査対象を広げるのではなく、さらに詳細な調査用紙やインタビューガイドが必要になると考えた。そこで、第1回の結果を踏まえながら、大幅に内容に修正を加えた調査票を作成した。これを第2回調査で実施することができた。 また、随時、明らかになった内容を報告し、実際にEPAで来日する看護師と関わっている関係者との意見交換を繰り返している。そのなかで、インドネシア看護師の看護観を引き出すためには、セミナーを開催し、その内容を受けて意見交換することが効果的ではないかとの方向性が明らかになったため、セミナー内容の吟味を繰り返した結果、第2回訪問時に2回のセミナーを開催することができた。この取り組みにより、看護師と具体的に意見交換をすることができ、さらなる課題が明らかになっている。
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今後の研究の推進方策 |
計画立案時に比べて、問題の焦点が明らかになってきており、実施計画の修正をしながら進めている。第2回現地調査のデータを分析中であるが、この結果により、技術教育内容の差異がより明らかになることが期待できる。この結果とり出されたことを、さらに次回現地にて発表し、さらに意見交換を進めていく予定である。 また、なるべく早い段階から、日本の受け入れ施設にも結果をフィードバックしていきたいと考えており、そのため、施設との協力関係を早期に築くために調整中である。 25年度後半からは、現地調査に協力してくれた研修生が来日し、施設での研修を始める予定となっているため、その看護師たちの成長過程を追いながら、調査結果の考察を進めていきたいと考えている。 これまでに把握したインドネシアにおける看護技術の特徴として、患者に実施する技術項目や、その技術の行動を見ると、日本とほぼ差異はないものの、患者への向きあい方、関わり方が異なるという点、また「インドネシアでは患者を見る視点が医学に偏っており、看護的な見つめ方がなされていないことに気付いた」という貴重な意見を得ており、その相異を明らかにできるような調査票の作成を予定している、また、インドネシアの看護師は高齢者の看護、特に認知症を持つ患者への看護について、関心が高いこともわかったので、日本における具体的な事例を提示して意見交換を行なっていきたいと考えている。それにより、さらに両国の教育の相違点が明確になっていくものと期待できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定通り、第3回、第4回現地調査を行うための旅費(必要に応じて、通訳などの人件費)として支出予定である。
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