研究課題/領域番号 |
24659967
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
永井 あけみ 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 准教授 (30570022)
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キーワード | 手浴 / 脳卒中 / 片麻痺 / 手関節可動域 / 手指関節可動域 / ストレス度 |
研究概要 |
本研究の目的は、脳の可塑性に有効な手浴方法の開発とその有効性を脳生理学的・心理物理学的に検証する事にある。現在まで10名の健常者に手浴予備実験と、2名の脳卒中後片麻痺の患者に本実験を行なってきたが、手関節および手指関節可動域の計測において、従来のゴニオメーターによる計測では計測者により誤差が生じ、データの信頼性に欠ける事がわかった。更に、手関節と手指関節可動域の計測では、手浴実施直前と直後・30分後・1時間後と4回、手関節と手指関節を一つひとつ計測していくため時間がかかり、実験期間も連日3週間と長いため、被験者の疲労と精神的な負担が大きい事がうかがえた。 手浴は本来心地よさを感じるとされているが、本実験でのストレス度計測では、手浴後に値が低下したのは健常者8名中4名であった。計測手技の未熟練が問題だと考えられる。そのため、本研究者が院生として所属する九州工業大学大学院生命体工学研究科において、KINECT for WindowsとPC13X7000-i7-SSBを用い、手をKINECT for Windowsに写す事で手関節と5本の手指関節可動域を可視的に提示できるソフトを開発中である。このソフト使用により、手指関節可動域等の計測が瞬時にでき、また被験者は、KINECT for Windowsに実際に映し出された自身の手を見ながら手浴前後の可動域の変化を自分で確認できるという利点があり、本実験の手関節と手指関節可動域等の計測に対する問題は解決すると思われる。 また、心理物理学検証法の一つとして、KINECT for Windowsを用いた顔の表情スケールのソフトはすでに開発を済ませている。 尚、唾液アミラーゼによるストレス度計測は、被験者が高齢で認知症を有する場合は、モニターチップを噛んだり飲み込んだりする危険が考えられ、認知症を有しない被験者を選択する必要がある事がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究目的の達成度としてはあまり進んでいない。その理由として手指計測値など、信頼性が求められる要素の問題解決法や、気分の可視的評価を可能とするフェイススケールソフトの開発等、実験以前の計測法に関する基本的な事項に取り組んでいた経緯がある。 また、現在までの実験から、片麻痺を有する被験者選択の条件としていた、手浴時に心地よさや心地悪さ等の感覚を言葉で表出でき、唾液アミラーゼモニターチップを噛まないよう依頼した時に依頼通りにできるなど、安全確保のために実験施行者とコミュニケーションがとれる患者で、かつリハビリテーションを受けていない被験者を探すのが非常に困難である事がわかった。そのため、今後の被験者選択の条件をリハビリテーションの有無に関らず、実験施行者とコミュニケーションがとれる患者とする。リハビリテーションの有無については、手浴実験開始前後の手関節と手指関節可動域および示指-中指間距離の変化と自動運動能力変化により本手浴の効果を評価できる事がわかった。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の実施計画として、まず脳波計講習会を受け脳波判読知識を確実なものとする。今後の実験計画として、購入予定の簡易脳波計BrainPro「FM929」を装着の上、健常者30名を対象とし、湯の温度を38℃・39℃・40℃に設定して非利き手をそれぞれ5分間つけるだけのグループ(コントロール群)と10名を通常の手浴群、10名を本手浴群に分け、開発した顔表情スケールソフトと開発中の手指可動域等計測ソフトを使用すると共に、唾液アミラーゼ計測も併用して実験を行う。尚、昨年までの実験で1日の中で湯の温度を変えて連続して行った場合、被験者の手の条件が変わって正確な解析ができないことが判明しており、それぞれ日を変えて実験し、湯の温度38℃~40℃での結果の相違を明確にする。計測は実験の直前と直後とし、血圧と脈拍も計測に加えそれらの変化を観る共に本手浴効果の有無を観る。また、脳波と顔表情スケール、唾液アミラーゼによるストレス度値を比較し、その同一性について検討する。結果の論文を学術論文誌に投稿する。 上記予備実験終了後、脳卒中後片麻痺患者5名を対象に上記の5計測ツールを使用し、看護における通常の手浴時間とされている片手につき5分間ずつ10分間の本実験を行う。通常、看護時に使用する湯の温度は40℃で行うことが多いが、心疾患のある被験者に対しては安全のため38℃で実施する。結果を論文にし学術誌に投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2台購入を予定していた簡易脳波計の機種をレンタルしての実験で、出現し難いとされるα2が装着時から出続け、当機の購入を中止。他機種のメーカの方に来校していただき、デモンストレーションを受けたが、結果の信頼性に欠ける事がわかり、信頼性の高い機種を検討していた。 また、従来のゴニオメーターによる手関節・手指関節可動域計測では、計測者により誤差が生じる事がわかり、より信頼性のある値を得るためのソフト開発および顔表情スケールに関するソフト開発に時間を要していた。また、当初に設定していたリハビリを受けていない脳卒中後片麻痺患者という選択条件を満たす被験者を探すのが困難であり、実験が進んでいなかったため当初のリハビリに関する選択条件を変更し実施予定である。 本年度の計画として、まず脳波計の知識を確実なものとするため、脳波計判読講習会受講とその旅費および簡易脳波計Brain Pro「FM929」を購入する予定である。また、手浴実験時の手関節・手指関節可動域計測に使用するCreative Senz 3Dを購入する。この他に被験者への謝金と実験補助者への謝金およびその旅費、本研修者の調査出張時の旅費と病院・老年者介護施設での実験時の旅費、データ処理に必要なUSB購入・印刷費などの事務経費、参考図書購入費と論文投稿費について使用計画を立てている。
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