研究課題/領域番号 |
24659968
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研究機関 | 了徳寺大学 |
研究代表者 |
川村 真由美 了徳寺大学, 健康科学部, 准教授 (80622935)
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キーワード | 介護 / シングル / 危機回避 / プログラム / DVD |
研究概要 |
24年度より進めてきたシングル介護者へのインタビューや厚労省2004年「養護者による虐待発生の要因」、および「介護の危機回避・促進要因」、Aguilera, D.C. & Messick, J.M.の危機回避のターニングポイント、檮木(2010),桜井(1999),新名(1991)などの先行研究を通して、シングル介護者の危機的状況を促進する要因や危機回避につながる要因を分析・検討した結果、Aguilera, D.C. & Messick, J.M.の危機回避要因である「コーピング」「情報」「サポート」の視点は、日本のシングル介護者の危機回避要因を捉えるうえで有効であること、介護の初期およびコーピング低下時に危機要因が増大すること、介護負担感、自己効力感、Sense Of Coherence (SOC)、 Depressive Symptomatology等がコーピングに影響を及ぼすことなどが示唆された。 このような要因の明確化は、今後のシングル介護者への危機回避に向けた支援にとって重要であり、更にこれらのデータを基に、介護申請から介護生活および介護者自身の心身のケアまで、介護者の悩みやつまづきにを軽減し、コーピング強化や生活の再編に向けた情報等を盛り込んだDVDという情報媒体を作成することは、気軽な外出や介護教室などへの参加が難しく、また社会的に孤立しやすいシングル介護者にとって、危機回避に向けた支援の一環として大きな意義があるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度はシングル介護者のインタビューと先行研究を進め、その成果を25年度に予定していたDVD「そろそろ介護かなと思ったら」に反映する形で作成できた。本研究の目的はシングル介護者の危機回避プログラムの作成であり、DVDはその目的達成のための重要な位置を占める。Aguilera, D.C. & Messick, J.M.の危機回避要因である「コーピング」「情報」「サポート」の視点から、コンテンツの中核を「まず始めにすること」「入院?!どうしよう!」「こんな時どうするの?」「たまには気分転換!」の4カテゴリーにまとめ、日常的なケアから介護者自身の親や介護への認識の転換をはかる経験談および介護者自身で行える体のメンテナンス、自己実現ノートの作成など、介護者の危機回避をターゲットにしており、その効果が期待できる。 当該年度はまた、インタビューの質的分析結果やSense Of Coherence (SOC) スケール、Quick Inventory of Depressive Symptomatology -John Rush(QIDS -J)、Zarit 介護負担尺度、檮木(2010)、桜井(1999)、新名(1991)などの先行研究を通して、DVDと同時に配布するアンケート項目の抽出まで進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、プレテストにてDVDの評価およびアンケート項目の精選を行い、その後約300名を対象に、DVDとアンケート用紙の配布、回収、分析を行い、分析結果をまとめて看護系学会に発表する予定である。 WAM NETに登録されている関東の地域包括センター、訪問看護ステーションからランダムに抽出した約1000施設に研究協力を依頼し(できるだけメールで)、協力を得られた施設にDVDとアンケートを送付し、同意を得られた対象者に配布して頂く。また同時に都内で高齢者の多い世田谷区、墨田区、練馬区などの住民基本台帳より、親子2人世帯約300組を選出し、アンケート用紙を郵送し、返信いただいた方にDVDを送付する。 アンケートは回収し、対象者の基本属性、危機的状況の把握および対象者のSense Of Coherence、Depressive Symptomatology、介護負担感や危機回避要因等について分析を行う予定である。 課題としては、アンケートの回収率やDVD評価の妥当性が上げられる。アンケートの回収率は、事前に施設に協力依頼を行うことで、ある程度回収見込みがたつため、分析に最低必要な数は確保できると考える。またDVDの内容評価は、自己実現プログラムやコーピング強化を含むため、本来ならば数か月~数年単位での評価が必要であるが、本研究では介護者だけでなく施設の介護提供者からの評価データを用いて、限界はあるが妥当性を検討することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は、インタビューデータや先行研究を基にDVD(危機回避プログラム)を作成した。計画段階ではDVD製作会社への支払いを契約時の一括払いとしていたが、実際には前受金とDVD完成後の納入時に2分割としたため、次年度使用額が生じた。 26年5月13日にDVDが納入されたため、直ちに支払い請求を行うので、26年度の研究費使用計画に特に変更はない。
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