本研究は在宅終末期ケアの質の向上をめざし、現場に即した訪問看護師の看護倫理教育の展開と組織化を本格的に行ったものである。具体的目的は1.すでに研究者らが開発した「パイロット版:訪問看護師の看護倫理の質の向上を図る教育プログラム」(以下:教育プログラム)を完成させ、2.完成した教育プログラムを展開できる人材養成プログラムを開発し、評価を行うことである。先ず、パイロット版教育プログラムの評価結果を踏まえ教育プログラムの修正から着手し、最終年度に教育プログラム実施・評価およびファシリテーター人材養成プログラムの開発・評価を行った。以下に最終年度の成果を記す。 1.教育プログラムの完成・評価…対象となる訪問看護師14名に修正した教育プログラムを提供し効果をM‐GTAを用いて分析した。結果:教育前、研究協力者は背景に隠微な責任転嫁を持ちながら“倫理的なるものとされる行為”に焦点を当てていたが、教育後は利用者に専心没頭する中で関心が自己から利用者へと移行し、自ずから利用者の安寧を促進したいという“自然なるケア(Natural caring)”へと変化していた。専心没頭と動機の置き換えに特徴づけられる本教育プログラムを推進していくことは利用者のQOLの向上強いては、在宅終末期ケアの発展に向け重要であることが明らかとなった。 2.ファシリテーター人材養成プログラムの開発・実施・評価…教育プログラムに参加し本研究への協力が得られた7名を対象に、研究者らが現象学的方法論に基づき開発したファシリテーター人材養成プログラムを提供し、その効果をM‐GTAを用いて分析した。結果:本ファシリテーター人材養成プログラムは、①看護行為を支える思いや感情など表面に表れにくい特性を敏感に注意深く捉える能力の向上や②ファシリテーターとして相手を慮り③支える力を育むという3つの能力の育みに寄与することが明らかとなった。
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