研究課題/領域番号 |
24659978
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
網島 ひづる 兵庫医療大学, 看護学部, 教授 (90259432)
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研究分担者 |
平岡 玲子 兵庫医療大学, 看護学部, 助教 (00514283)
竹田 千佐子 兵庫医療大学, 看護学部, 教授 (10148273)
大西 英雄 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (10326431)
山中 道代 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (60280187)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | フィジカルアセスメント / 協働学習 / シミュレーション教育 / 看護教育 |
研究概要 |
平成24年度の目的は協働学習型のシミュレーション教育システムの整備、シナリオ・教育プログラムなどの教材開発を実施するとともに学習者のインストラクターである「学習コンダクター」を育成することである。まず、シミュレーション教育環境を整備した。次に、シミュレーション教育を実施する研究代表者、分担者、協力者(医療施設における看護職員への教育担当者)で指導者チームを設立した。メンバーは看護教育学、基礎看護学、急性看護学、老年看護学、看護管理などの専門家である。さらに学習者チーム(学部学生・看護師)を設立した。 学部2・3年生、卒後1年・3年目の看護師を対象として、臨床判断能力の向上を視点において学習目的を明確にしたうえで教育プログラムを開発した。シミュレーション教育プログラムの構成はデザインとシナリオの2部構成とした。デザインにはテーマ、学習者、時間、学習目標、対象者(患者)の状態、シミュレーション課題、事前学習課題などを含めた。シナリオには具体的なシナリオ(学習者の理想の動き、指導者の介入も含む)・目標、ディブリーフィングガイド、評価を含めた。開発した教育プログラムのテーマは「情報収集」「検温」「術直後の観察」「術後の患者ケア」「急変対応」「高齢者の看護」などである。 協働学習型シミュレーション教育のために必要な「学習コンダクター」育成のための教育を年2回(8月・3月)実施した。教育内容は、シミュレーション教育の重要性、学習方法、学習方法の注意点、役割認識の理解などである。教育後の面接調査において、コンダクター対象者はチーム学習におけるコンダクターの役割の重要性とともに、役割を担うのは心理的なプレッシャーがかかるけれどやりがいがあると回答していた。これら平成24年度の成果をもとに、平成25年度は協働学習型のシミュレーション教育を実施し、その教育効果を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者・研究分担者、研究協力者が指導チームを設立し、月1回の定期的なミーティングをもち研究を遂行した。また、指導チームメンバーの指導力向上のために、メンバーはシミュレーション教育の専門的なセミナーに参加した。さらに学習チーム(学部学生・看護師)2チームを設立しメンバーを決定した。教育環境については所属大学の設備を活用すると同時にシナリオに対応した必要物品を購入した。以上のように研究体制や教育環境を整えることができた。 フィジカルアセスメント能力を高めるシミュレーション教育プログラムの開発は、リアリティのある状況を設定、医学的・看護の経過を踏まえる、刻々と患者の容態が変化する、学習者が複数の選択肢から選ぶ、患者の反応を織り込むなどを考慮して開発ができた。教育プログラムの構成(デザイン・シナリオ)、含まれる基本的な要素についても決定できた。それに合わせて6テーマのプログラムを開発できたが、デブリーフィングや評価については、もう少し精練が必要である。 本研究の重要な点は、学習者同士が教えあうことにより相互に学力を向上させるという協働学習の効果を明らかにすることにある。協働学習を推し進めるためには学習コンダクターの育成(学部4年・看護師3年目)がポイントである。そのコンダクター対象者への教育を実施できた。しかし、教育後の面接調査から、コンダクター対象者は心理的な負担を感じていることが明らかになった。その負担を軽減するためには、コンダクターを含めグループメンバーが学習目標の到達を実感できるように支援することで、コンダクターとしての役割を担う積極的な気持ちが喚起できると考えられることから、教育プログラムに追加を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、前年度の成果のうち教育プログラムについてはデブリーフィングや評価について検討し10程度に増やす。その後、開発した教育システム(教育体制・環境、学習チーム、開発したプログラム)を稼働させ、協働学習型シミュレーション教育を実施し、その教育効果を明らかにすることを目的として研究を推進する。 具体的には、実験群の対象者に開発したフィジカルアセスメント能力を高めるシミュレーション教育プログラムにそって学習を実施する。年2回(8月・12月)の時期に2日間実施する。教育評価は、実施前後の面接調査、シミュレーション教育中のビデオの画像(画像を行動分析し数値化)、観察者によるチェック表を用いた対象者の行動観察、学習者による自己評価、対象者の視線解析(視線追尾システム)などによって行う。対照群は、同時期に、実験群と同様の状況・場面を設定しシミュレーション人形を使用して実施する。実験群と同様のデータを収集する。そのため計画どおり、実験および対照群の対象者の旅費や人件費・謝金などに経費が必要であることが予測される。また、予定外の経費では視線追尾システムのレンタル費用が加算される予定である。この経費はその他で計上している経費で対応する。 収集したデータの分析は、実験群と対照群を比較検討する。また、2回の時期の変化も分析し教育効果を明らかにする。さらに、視線解析によって、教育による看護介入における看護師の視線の追尾や視線範囲の広がりの変化を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は開発した教育システムを稼働させ、協働学習型シミュレーション教育を実施し、その教育効果を明らかにすることを目的としている。実験・対照群の対象者(16名程度)、研究協力日数などから人件費・謝金の経費が必要であるため、次年度使用額(16,027円)は平成25年度の支出費目のうち人件費・謝金費に加える。
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