研究課題
本研究は、フィジカルアセスメント能力を高めるための協働学習型シミュレーション教育システムを開発・評価をすることを目的とする。協働学習型の教育システムとは学生同士が教えあうことにより相互に学力を向上させる教育システムである。対象は学部3・4年の学生と卒後3・4年目の看護師の計8名である。対象者に、前年度に開発したシミュレーション教育プログラムを適用した。年2回(3月・9月)の時期に2日間の教育を実施した。教育は講義と演習で構成する。講義内容は、シミュレーション教育の概要、学習方法、教材、チームワークなどである。演習内容は、開発したシナリオベースのシミュレーション教育である。演習の構成は、事前準備(必要な知識の補充)、学習教材の説明、シミュレーションの実施、デブリーフィング、再シミュレーションの実施である。シナリオは入院患者、術後患者、高齢者を対象に10シナリオを開発したが、そのうち術後合併症早期発見のための観察と看護、転倒した高齢者への対応、感染症状が出現した高齢者への看護などのシナリオを適用した。教育実施前後に研究者が作成した半構成的質問紙を用いて面接調査を、シミュレーションの場面のビデオ撮影を実施し、それらをデータとした。面接データは内容分析を、ビデオ画像は対象者の行動の分析(シナリオの目標にそって行動を評価、役割の遂行の評価、コミュニケーションの評価)を行った。その面接調査結果から、対象者はチームワークの重要性、協働学習による考え方や視点の広がりなどの学習効果を実感していた。また、ビデオ画像の分析から、セッションを重ねるごとに学習者の行動が目標に照らして妥当性を増す、コーディネーターと実施者とのコミュニケーションが増加する、デブリーフィングの内容と再シミュレーションの学習者の行動とが関連することが確認できたことから、開発した教育システムは有効であると判断できた。