研究課題/領域番号 |
24659980
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
石川 洋子 旭川医科大学, 医学部, その他 (30550660)
|
研究分担者 |
濱田 珠美 旭川医科大学, 医学部, 教授 (00374273)
|
キーワード | スキンライフ |
研究概要 |
本研究はEGFRを標的とする分子標的薬治療を受ける進行非小細胞肺がんを持つ人のスキンライフが脅かされる経験を明らかにし、ケアエビデンスと統合したNSCLCスキンライフサポートPHを開発することを目的とする。 本年度は、昨年度に研究の趣旨を理解し同意が得られた6名のデータについて、分子標的医薬治療を受け、スキンライフが脅かされた進行非小細胞肺がん(以下、進行NSCLC)を持つ人の基本モデルを作成するため、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(手順:①データの文字化②データの切片化③オープン・コーディング④アクシャル・コーディング⑤セレクティブ・コーディング)により第1段階の再分析を行った。 進行NSCLCを持つ人が経験した皮膚障害は、ざ瘡様皮疹、皮膚乾燥、掻痒症、爪囲炎、皮膚疼痛であった。以下、【 】はカテゴリー、《 》はサブカテゴリー、〈 〉はラベル、“ ”は言語データを意味する。 分子標的薬治療を受ける進行NSCLCを持つ人は、〈気になる顔の症状〉〈ストレスとなる頭皮の症状〉〈強い痒み〉 〈割れる爪〉〈触れない強い痛み〉などの《さまざまな皮膚症状》の出現を経験し、〈ひどさに応じた塗りわけ〉〈こまめな保湿剤塗布〉や〈日常動作の工夫〉など、症状を自己評価しながら【皮膚症状への対処】を行っていた。【皮膚症状への対処】の結果、《症状の改善》を得て《自分なりのスキンケアの獲得》のプロセスを経るものと、《さまざまな皮膚症状》に対し〈掻く〉〈皮膚治療薬の効果のなさ〉から皮膚治療薬を中断、あるいは《分からない対処方法》が《繰り返す症状》と《症状の深刻化》のサイクルの中で《避けられなかった休薬》に至るプロセスであることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分子標的薬治療を受け、スキンライフが脅かされた進行NSCLCを持つ人の基本モデルの作成のため、昨年度の分析方法を一部修正し再分析を行ったことにより、EGFR-TKIによる皮膚障害のケアエビデンスの文献検討の開始とアセスメントツールの作成に遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
スキンライフが脅かされた進行NSCLCを持つ人の【皮膚症状への対処】から《自分なりのスキンケアの獲得》へのプロセスは、【皮膚症状への対処】に関する資源や情報が豊富ではなく、《さまざまな皮膚症状》を何とか凌ぎながら過ごしていた。また、《分からない対処方法》《繰り返す症状》《症状の深刻化》のサイクルと《避けられなかった休薬》に至るプロセスでは、《がんの進行に対する不安》を抱く、あるいは今までの自分の“がんと闘う”〈治療姿勢に対する疑問〉を生じ、不安、葛藤、落胆などのつらい気持ちを抱えていることが窺えた。 このことから、スキンライフが脅かされた進行NSCLCを持つ人へのサポートとして、①脅かされたスキンライフへのさまざまな方策の活用、②症状の観察とスキンライフケアの取り組みの自己評価、③共にスキンライフケアに取り組む医療者の存在を必要とすることが示唆される。この結果とがん看護CNSとの協働によりエビデンスの高いケアを統合し、スキンライフが脅かされた進行NSCLCを持つ人のスキンライフサポートPHの構築に取り組む。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度はデータ入力やテープ起こし代がかからず、人件費・謝金分の残金が生じた。 本年7月に開催予定の第55回日本肺癌学会学術集会参加のための旅費として使用する。学術集会参加において、進行NSCLCを持つ人の分子標的薬治療ならび皮膚障害の管理の最新の知見について情報収集を行う予定である。
|