研究課題/領域番号 |
24659985
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
光行 多佳子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10581332)
|
研究分担者 |
大川 明子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20290546)
安藤 詳子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60212669)
阿部 まゆみ 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (80467323)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | がん患者サロン / がん診療連携拠点病院 / がん患者 / サロン / がんサバイバー |
研究概要 |
平成24年度は、第1ステップとして、がん診療連携拠点病院での「がん患者サロン」について先駆的な活動をしている施設を調査し、実施要件への示唆を得ることを目的とした。 がん診療連携拠点病院397施設のうち、5月までに学会発表や雑誌等に「がん患者サロン」の実践報告をしている22施設を抽出して研究協力を依頼した。研究参加の同意を得た15施設(68.2%)を研究者が訪問して、病院概要、「がん患者サロン」の実施状況、利用者、病院職員スタッフ、ボランティア、運営、経緯、評価と課題について自作の質問票に沿い、「がん患者サロン」担当職員から聴取り調査した。平均面接時間は62分、記述的回答をBerelsonの内容分析を用いコードからカテゴリーへと生成した。カテゴリーは、「がん患者サロン」が円滑に進んでいる点を示す事柄を「がん患者サロンの実施要件」として11個、課題など問題点を示す事柄を「実施要件が満たされない状況」として10個となった。それらについて分析を進め概念枠組みを設定した。結論として、「がん患者サロン」は、看護師やMSWなど適切な運営スタッフと、協力的な組織を基盤として、利用者ニーズに添った活動により、利用者の変化や満足の成果を上げ、周囲の支援を得て広報を進めていくことの重要性が示唆された。 次に、第2ステップとして、「がん患者サロン」を効果的に運営する実施要件を明確にすることを目的に、第1ステップで設定した概念枠組みに沿い、自記式質問紙を作成した。対象は、より広範囲の実践例を調査するため、がん診療連携拠点病院と都道府県市が指定するがん診療連携拠点病院(それに準ずる施設を含む)611施設とした。平成25年3月研究参加の同意を得た193施設(31.6%)に自記式質問紙を送付し、3月末で170施設の回答を回収し分析を開始している。 本研究は研究者所属大学の倫理委員会の承認を得て実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、第1ステップの調査は、当初の計画では面接調査5件、電話・メールによる調査15件としていたが、対象施設15件すべてを訪問して面接調査し、詳細なデータを得ることができた。これには、調査を夏場に設定したことで対象者と研究者のスケジュール調整しやすく面接日時が確保されたことと、1度に複数の施設を周るようにして旅費を効率的に使用したことで可能となった。面接調査では、研究者が、対象施設の立地条件や、「がん患者サロン」の院内での配置、実際に開催する部屋、資料等を視察でき、概略を捉えることができた。そして、その状況に至った理由として、「がん患者サロン」の成り立ち、利用者の特徴、管理運営の特徴、対象者の職種や意識などを視察の場で研究者が疑問に思ったことや、気づいたことの中で質問し、少しずつ聞き出して施設の特徴を掴んでいくことができた。調査前には想定しえなかった内容も多く、面接調査のデータは、カテゴリー間の関連性を分析し概念枠組みを設定する際に非常に有用であった。 次に、第1ステップの調査は、計画よりデータのボリュームが大幅に増えたにもかかわらず、作業がはかどり順調に遂行し、現在第2ステップの調査を前倒しにして進めることができている。これは、本研究の遂行において、平成24年4月より、研究代表者、研究分担者、研究補助者(大学院生、学部生)で「がん患者サロン研究会」を立ち上げ、本学の人的資源を最大限に活用して研究してきたことで可能となった。毎月1~3回の会議を開催してディスカッションを重ねると同時に、業務や進捗状況に応じ作業を分担して進めている。 最後に、本研究結果は、第18回日本緩和医療学会学術大会での口演を2題、日本死の臨床研究会へ論文1題を投稿しており、当初の計画より発表の機会を早めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、第1ステップの調査で、がん診療連携拠点病院における「がん患者サロン」の地域的な活動について、対象者から情報を得ることができた(中国・九州地区)。患者会との分別は必要ではあるが、地域の中規模病院の実践を本研究に反映させたいと考え、第2ステップの調査は対象を拡大して実施した。これによって、より実効性のある「がん患者サロン」の実施要件を明らかにして、汎用性のあるモデル構築をしていきたいと考えている。第2ステップの調査研究結果についても、学会発表や論文投稿を行う予定である。 次に、第2ステップの調査で、「まだサロンを設置していないので、調査には協力できないが、本研究結果を是非知らせてほしい」という要望が、返信はがきやメール、電話で多数研究者に寄せられた。対象施設の関心の高さを再認識し、はがきなどで連絡があった全施設に、集計結果等を文書で報告する予定にしている。 さらに、将来的には、本研究で協力を得た施設や、新たに実践報告をしている施設、新たに設置を企画している施設に呼びかけ、「がん患者サロン」のネットワークを作り、事務局を本学において、情報発信、意見交換、継続実践する上でのコンサルテーション、新しく設置をする場合のコンサルテーション機能などを持つ会にしていきたいと考えている。それ向けて、本研究で明らかにする運営側からの「がん患者サロン」の実施要件だけではなく、利用者の意見を反映した実施要件を検討する必要があると考えている。具体的には、利用者が求める「がん患者サロン」のあり方について、実践を重ねているサロンを利用している方へ調査を行っていくことや、「がん患者サロン」の活動が、利用者にどのような効果をもたらすのかについて、QOLや満足度などから検証していくことを考えており、早期に研究を企画していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
設備備品費として、調査対象の増加に伴いデータ分析が煩雑になり、本研究専用のパソコンが必要であり、研究への同意書や回収した調査票などデータ保存用収納が満杯となったため、本研究専用のカギ付き収納棚が必要である。その費用として、15万円が必要である。 通信費として、対象施設への成果報告書類の送付代と、新しいパソコンに対応した統計ソフトに19万円が必要である。 消耗品として、成果報告書の印刷や製本、封筒の印刷で15万円が必要である。 人件費・謝金として、質問紙送付・回収・データを入力整理する研究補助スタッフへの謝礼や専門的知識を提供するスタッフへの謝礼に11万円が必要である。 国内旅費として、成果発表のための学会出張(第18回日本緩和医療学会学術集会、第37回日本死の臨床研究会年次大会等)が20万円必要である。
|