研究課題/領域番号 |
24659986
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
安田 斎 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80135467)
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研究分担者 |
松永 早苗 聖泉大学, 看護学部, 助教 (30614581)
河田 志帆 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (70610666)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 糖尿病足病変 / 糖尿病神経障害 / フットケア外来 |
研究概要 |
Y病院透析外来・入院患者及びS大学病院入院患者44人を対象にして、看護師である研究協力者が足観察により足病変のスコア評価、モノフィラメント(圧触覚)検査、爪楊枝(痛覚)検査、アキレス腱反射及び短趾伸筋の視診・趾背屈による筋力検査に加えて客観的検査として神経伝導検査(他研究協力者による)及びPain Visionによる母趾背部での感覚閾値の検討(研究協力者)を行い、これらの結果から糖尿病神経障害の診断と病期分類を行った。同時期に医師である研究者による同一の検査を行い、研究協力者と医師である主任研究者との整合性の検討を行った。看護師による評価では神経障害ありは44名中26名(59%)、病期分類はI期18、II13、III9、IV4名で、医師による評価では、神経障害あり25名中9(36%)、I期16、II期4、III期1、IV期4名であった。看護師で神経障害ありの診断が多く、病期も重症に判定する傾向があった。両者の病期分類の相関は0.682(P=0.000)であったが、一致率は高くなかった。これは、看護師でアキレス腱反射の評価で陽性を陰性に評価する傾向があることが一因と思われた。また、神経障害の診断基準は患者の症状の有無も判定項目に入っているが、両側性の確認や糖尿病神経障害に起因する症状かどうかにつき一定の判断が必要になるなど、症状を聴取する際に注意を要することが確認された。今後、症例を増してさらに詳細な検討を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フットケア外来の業務に携わる看護師が自ら一定のモチベーションを持って、糖尿病足病変の原因になりうる糖尿病神経障害の自覚症状聴取、ベッドサイドにおける診察、簡単な検査を行い、ある程度の実施能力を有するに至り、一定の成果を達成しえたと思われた。しかし、レベル的にはまだ目的とするレベルには達していないので、今後、続けて視聴覚教育を含めた実践教育と評価能力を獲得するべく指導していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究総括から、看護師がフットケア外来で糖尿病神経障害の診断を正しく行うには患者の訴える多くの自覚症状を、神経障害に起因するものとして取り上げる必要があり、他疾患による症状との相違を認識させるため頻回の教育と動画などによる視聴覚教育が有用と考えられた。今後、経時的に取り入れたい。また、改めてアキレス腱反射の糖尿病神経障害の診断手段としての重要性が認識された。しかし看護師にとって手技取得は困難であり、時間を要すると思われた。同手技の取得のためには罹病期間の短い糖尿病患者、神経障害を有さない他疾患や高齢者も含めた健常人を対象にしての実技が有用と思われ、今後、技術の取得に向けて実践的教育を行いたい。また、研究協力者は、これらの検査手技に対してすでに現段階で研究前に比べて熟達を実感しており、今後、実践的教育の成果につき、研究期間の前期と後期での実践能力がどのように変化したかなど、評価方法の検討を行いたい。一方、足病変の進展が、糖尿病神経障害の病期や神経機能の重症度とどのように関連しているのか、これまで得られた神経伝導検査、Pain Visionによる感覚閾値などの比較的客観的感覚検査の成績を基に検討したい。さらに、糖尿病足病変は糖尿病神経障害を基盤に発症してくるので、足病変の有無あるいは足病変のスコアを従属変数として、神経所見、神経機能検査などを連続変数としてロジスティク回帰分析や重回帰分析により足病変に対する神経機能の関与につき分析したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は今年度に引き続き、病棟入院患者を中心に診察及び各種検査を実施したい。また、看護師に対する教育を実践するために、ノートパソコンと教育用DVDを購入したい。足病変の検討にはデジタルカメラあるいはビデオカメラが欲しい。また、Pain Visionによる感覚閾値の検討には消耗品として電極が必要。モノフィラメント・ハンマー・音叉などの診察道具の予備、データ整理のためのプリンターインク・用紙など各種文房具、関連文献取得費用、神経伝導検査の記録・集計用タビュレット。また、研究者及び研究協力者が海外・国内関連学会に出席に意見交換あるいは可能であれば研究協力者が研究発表を行いたい。
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