本研究の目的は、過疎・高齢化が進み医療費・介護費が増大する地域において、Population Health Management(PHM)の概念を適用し、慢性疾患と高齢化を中心的テーマに、一次予防から三次予防まで全体を視野に入れ、地域住民のヘルスプロモーション、疾病予防、疾病管理/重症化予防を行い、医療・介護財政の健全化を狙うものである。最終ゴールは、離島に指定されている広島県大崎上島町を一つのモデルに、高度実践看護師の介入によって、プライマリ・ケア及び慢性疾患疾病管理技術を武器に、健康指標の向上を実現しようとするもので、他の地域にも応用可能な方法論を構築することである。 平成26年度は、(1)後期高齢者医療レセプトデータを分析し、疾病構造、医療費の使用され方の特徴、高額使用者等を把握した。(2)町の保健衛生課、町医師会、地域包括支援センター、訪問看護、介護保険事業者等との在宅医療推進会議を開催し、(3)地域包括ケアシステムの構築も視野に入れ、各種事業を行った。PHMの概念と方法論に基づき、①在宅看取りを推進するためのケースカンファレンスの開催、②アドバンス・ケア・プラニング推進のための住民対象の啓発事業やエンディングノートの作成、③一人でも住み慣れた場所で最期まで生きられるよう「寄り添いパートナー」の養成、④医療に強いケアマネジャー養成、⑤高額医療者や入退院を繰り返す人々に対する高度ケースマネジメントと遠隔モニタリングの実施、⑥生活習慣病リスクを有する住民やセルフマネジメント・スキルの習得が必要な慢性疾患を有する住民について、かかりつけ医との連携の下、疾病管理を進める事業を実施し、健康指標は統計的有意差をもって改善した。
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