本研究の目的は,ユズ種子オイルを用いたアトピー性皮膚炎症状緩和塗布剤の開発のため,①培養細胞を用いた機能性試験を実施し,マウス肥満細胞(P-815細胞)のヒスタミン放出の検証.②Nc/Ngaマウスを用いたアトピー性皮膚炎(AD)モデルによるユズ種子オイル塗布剤の症状緩和効果の検証.③ユズ種子オイルをアトピー性皮膚炎患者および老人性乾皮症患者に塗布し,症状緩和効果および,有害事象の検証を行った.①にいては、P815細胞(マウス肥満細胞株)2×106 cells/200μlに対し2.5μlのユズ種子オイルを添加し16時間共培養を行った後,終濃度10 mMのA23187を添加し,15分間のヒスタミン放出量をELISA法で測定した.その結果,16hでは,対照群10.58±0.299nM,未精製0.02±0.172 nM,精製11.4±0.29 nMで,未精製に顕著なヒスタミン放出阻害効果があった.②に対しては,Nc/Ngaマウスに100mgのダニ抗原を2週間に6回塗布しADを発症させた.惹起と同時にオイルを4週間塗布した.ユズ種子オイルは未精製(以下、未精製)と,蒸留した精製(以下、精製)の2種類を用い,対照群にはオリーブオイルを塗布した.結果,皮膚スコア,組織化学的解析,耳介の腫脹,血清ヒスタミン量は,未精製,精製ともに抑制効果が認められたが,精製の効果が高い傾向にあった.③に対しては,アトピー性皮膚炎患者7名、老人性乾皮症患者16名の症状の出現している部位にユズ種子オイルを1日2回、28日間塗布した.結果,奏効例が確認でき、有害事象は認められなかった。これらの結果より,ユズ種子オイルは,かゆみの原因となるヒスタミンの放出阻害,つまりアトピー性皮膚炎の患部のかゆみを軽減する可能性が示唆された.
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