研究課題/領域番号 |
24659994
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
久保 五月 北里大学, 看護学部, 准教授 (60348597)
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研究分担者 |
稲吉 光子 北里大学, 看護学部, 教授 (60203212)
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キーワード | 情報リテラシー / 情報ニーズ / がんサバイバー / がん患者 / アクションリサーチ / 前立腺がん / 子宮がん |
研究概要 |
研究目的は、がんサバイバーと協働して「情報リテラシーを高めるモデル」を開発することである。平成25年度はモデル開発の第2段階と位置づけ、情報支援プログラムの内容に関する知見を得るために、以下の3点を実施した。 1.国内・海外文献レビュー:平成24年度からがんサバイバーの情報ニーズに関する文献検討を継続して行った結果、診断後の時間経過に応じて情報ニーズの優先順位が変化するなど、いくつかの重要な知見を得た。しかし、文献の多くはがんの診断期・治療期に焦点をあてていたため、さらに長期生存期のがんサバイバーを対象とした文献検討を追加、実施した。過去10年間の国内研究は6件のみであった。海外では長期生存期の研究が52件あり、近年増加しつつあるが、情報ニーズという観点からの研究はまだ少ない。研究分野としての重要性が確認された。 2.情報ニーズと情報探究行動に関する研究:長期生存期のがんサバイバーのうち前立腺がんサバイバーを対象者として、初期治療後の情報ニーズと情報探究行動に関する実態調査を開始した。①半構成的面接と②健康関連QOL尺度を用いた質問紙調査を、治療終了後6か月、1年後、2年後、3年後の計4回行う計画である。長期的なデータ収集により、治療終了後の時間経過に応じた知見を得ることが期待できる。 3.「情報リテラシーを高めるモデル」開発のためのアクションリサーチ:モデル開発の手立てとして、がんサバイバー参加型のアクションリサーチを採用している。平成25年度は、①参画するがんサバイバーのリクルートと、②アクションリサーチに関する勉強会を実施し、モデル試案作成に向けてがんサバイバーと医療者との準備状況を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度はモデル開発の第2段階と位置づけ、がんサバイバーに対する情報支援プログラムの内容に関する知見を得るために、3つの計画を立案した。各計画の達成度は、以下の通りである。 1.国内・海外文献レビュー:平成24年度から継続していた海外文献155件の分析を全て終了した。さらに、診断後の時間経過に応じて情報ニーズの優先順位が変化するとの知見を踏まえ、長期生存期にあるがんサバイバーを対象とした文献に焦点をあてて看護研究の動向を探索した。この結果は第28回日本がん看護学会学術集会(平成26年2月)において発表した。 2.情報ニーズと情報探究行動に関する研究:研究対象者として初期治療終了後の前立腺がんサバイバーを選択し、治療後6か月経過した時点での情報ニーズと情報探究行動に関する①半構成的面接と②質問紙調査を実施している。今後、さらに対象者を追加してデータ収集を継続する予定である。昨年度の計画では前立腺がんサバイバーの他に乳がんサバイバーの調査も行う予定であったが、文献レビューの結果を踏まえ、より研究数が少なく、実態把握の重要性が高い子宮がんサバイバーに対象を変更することにした。この研究計画は立案済みで倫理審査終了後に開始する予定である。 3.「情報リテラシーを高めるモデル」開発のためのアクションリサーチ:平成25年度はモデル開発に参画するがんサバイバーに対してアクションリサーチの勉強会を実施した。研究計画にそって進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は「情報リテラシーを高めるモデル」開発の最終段階である。3つの研究を同時に進行し、得られた成果を相互に反映させながら、モデル試案の作成、修正の過程を進める。以下、各研究計画の概要と推進方策を示す。 1.前立腺がんサバイバーの情報ニーズと情報探究行動に関する研究:対象者をさらに追加して治療終了後6か月のデータ収集を行うとともに、既に平成25年度から研究に参加している対象者の1年後のデータ収集を並行して実施する。 2.子宮がんサバイバーの初期治療後の情報ニーズと情報探究行動に関する研究:前立腺がんサバイバーの研究と同様に、①半構成的面接法と②健康関連QOL尺度を用いた質問紙調査を同時に行うミックス法を採用する。対象者は15名程度を予定しており、豊かなデータを効率的に得るために子宮がん看護の経験をもつ研究協力者(がん看護専門看護師など)を追加し、情報収集および分析を進める。 3.「情報リテラシーを高めるモデル」開発のためのアクションリサーチ:平成26年度はグループ討議によるモデルの試案作成を試みる。そのための手法として、がんサバイバーと医療者の協働によるアイディア創出型のフォーカスグループインタビューを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
①平成25年度から縦断的研究を継続していることと、②平成26年度に新たな研究を開始することから、平成26年度はデータ収集に係る経費が多額になることが予測されたため。 平成26年度の主な経費は、①謝金、②交通費、③物品購入費、④その他である。①謝金は研究協力者(面接実施者)の専門的知識に対する謝礼として計上する。②交通費の内訳は面接および学会参加時の交通費である。③物品購入費は尺度のライセンス契約料と統計ソフト購入費用にあてる。④その他として、データ処理(逐語録作成)に係る費用を計上する。
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