本研究の目的は、大量化学療法・造血幹細胞移植を受ける小児がん患者の皮膚障害に対し、画像解析、皮膚水分量、皮脂量、経皮水分蒸散量の計測結果によって看護師が用いる皮膚の評価指標を作成することであった。 しかし研究施設での移植の中断、対象者の社会的事情、家族の意向などにより、対象者のリクルートが困難であった。対象となる疾患を増やす等の計画の変更を行ったものの、平成25年度までにデータを得ることができたのは2例のみであった。 研究計画の見直しを迫られたため再度文献検討を行い、既存の皮膚障害評価指標であるCommon Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE)を用いた研究では、評価者によってグレードの決定に差が生じる事、決定を行う際に「臨床判断」というプロセスを経ることが明らかになった。このため、画像・皮膚計測データに加えて看護師の皮膚障害に対する臨床判断とその影響要因を明らかにし、最終的にスキンケア看護指標を作成することとした。 造血幹細胞移植後の皮膚障害の典型事例2事例に対する臨床判断と、文献検討から臨床判断に影響すると考えられる「組織風土」「看護師の自律性」「医師との協働的実践」「造血幹細胞移植看護に関する専門的知識」について問う質問紙を作成し、全国の日本骨髄移植推進財団移植認定病院(168施設218病棟)に勤務する看護師、がんまたは小児看護専門看護師、がん化学療法、皮膚・排泄ケア認定看護師3022名に配布した。回答は237部(回収率7.8%)を回収し、現在統計解析ならびに臨床判断のプロセスについて質的に分析を行っている。現在の所、看護師の経験年数といったデモグラフィックデータとCTCAEを用いた評価の正確性には有意な相関は認められていない。分析結果は2016年9月に開催される国際がん看護学会で発表する予定である。
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