わが国の帝王切開率は増加傾向が続いている。分娩後の子宮復古現象は形態的にも大きな生理的変化であり,対象の健康査定を行い看護ケアを決定する上で重要かつ必須の観察項目である。経腟分娩における子宮復古現象については明らかになっており,アセスメント指標として定着している。しかしながら帝王切開後の子宮復古がどのような経過をたどるのか,明確ではない。本研究の目的は,査定ためのツール開発に向け,帝王切開後の子宮復古現象を明らかにすることである。 これまでの分析結果で,経腟分娩と比較し帝王切開分娩では有意に子宮底長が大きいことを確認した。また,単胎に比し多胎の事例では有意に子宮底長は大きいことがわかった。子宮復古に影響する要因と考えられる子宮の過伸展に加え,さらに詳細に子宮復古に影響する要因として,分娩既往,母体年齢,新生児の体重,分娩時出血量,授乳状等を検討(重回帰分析)した。このうち新生児の体重,授乳状況,母体の年齢は有意な関連を示した。授乳状況は他の変数よりも標準化係数(-.40~-.74,p<.05)は大きく,影響力が大きいことが推測された。 これらの分析結果を踏まえ,最終年度では分析対象者を単胎および正期産に限定し,帝王切開後の子宮底長について調査した。子宮底長は産褥0日約17cmから徐々に下降し,3日目には約15cm,7日目には約13cmとなった。子宮底長の標準偏差は1.5~1.9 cmであり,ばらつきがあった。正期産を対象としたが,週数差や胎児の体重差が考えられ,あるいは授乳状況の違いがばらつきの背景にあるものと推測された。以上のことから,帝王切開後の子宮復古は経腟分娩に比し緩やかであることが特徴として見出された。
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