小児がん経験者の語りからみた医療PTSD予防に向けた介入プログラムの検討結果は、次の2点であった。①学童期以降に発病した小児がん経験者に共通した語りの内容から、発病時の強い情緒的反応は医療PTSDにつながる問題と考えられ、医療PTSD予防に向けた発病時の看護の重要性が示された。②発病時の強い情緒的反応の後に、価値観・信念・自己像を再構築しようとする「もがき」があり、この渦中がPTSDとPosttraumatic growth(以下PTG)の岐路となることが示された。 Sense of coherence(以下SOC)尺度およびPTG尺度の評価における高群の語りには共通点があり、独自の対処戦略を駆使してあらゆる問題と向き合いながら「もがき」の渦中で闘病の意味に気付き、自らを再構築するかのように新たな価値観を見出していることが特徴であった。この新たな価値観により小児がんの闘病を人生の糧にしていく、心理的な成長の過程が明らかになった。一方、SOC尺度およびPTG尺度の評価における低群の語りにも共通点があり、「もがき」を回避すべく密着した親子関係や医療者との関係を頼りとしたコーピングをとるが、心理・社会的な問題の解決に至らずに思い悩み、現在も成人期の発達課題の達成に何等かの困難を抱えていることが特徴であった。 今後は、「価値観・信念・自己像を再構築しようとするもがき」の渦中をより詳細に分析して闘病による心理的成長の過程を構造化していくことが、プログラム作成に有効であると示唆された。
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