研究課題/領域番号 |
24660015
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 上武大学 |
研究代表者 |
大槻 優子 上武大学, 看護学部, 教授 (10258973)
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研究分担者 |
高野 みどり 上武大学, 看護学部, 講師 (50615705)
川名 ヤヨ子 了徳寺大学, 健康科学部, 教授 (60458437)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 被災妊婦 |
研究概要 |
東日本大震災被災妊婦のなかで、花巻市の健考館「アネックス」に避難し分娩を迎え、産褥期まで支援を受けた被災妊婦7名の中で承諾が得られた3名を対象に、半構造的面接を行った。面接内容は①基本的属性 ②地震が起きたときの状況 ③災害後の状況などである。また、被災妊婦のストレス反応は、David Romoの「ストレス反応チェックリスト」を用い、「被災者の心理的回復プロセス」に沿って被災直後、出産前後の時期、現在に至るまでの心理状況について、心理・感情面、身体面、思考面、行動面の4側面からチェックリストを作成し把握した。チェックリストは点数化し得点を算出し比較した。さらに被災妊婦の支援を行った助産師2名、家事ボランティアを行った3名に半構造的面接を行った。 結果は、被災妊婦のストレスは災害直後が最も高く、避難所の環境や胎児の発育、健診・出産の場の移動などを余儀なくされることなどが影響していると考えられる。被災直後に比較し、花巻市の被災妊婦の受け入れ事業により、避難しているときにはストレスは低くなっていた。しかし、1年以上経過した時点でのストレスは出産時に比較して高くなっており、特に心理・感情面が高くなっていた。避難所では助産師、家事ボランティアの方々の支援が行われ、安心して過ごすことができたと話されていたことからストレスが軽減したものと思われる。受け入れ事業が終了した現在も継続的に助産師からの支援を受けており、その支援のお陰で子育てができているとのことから、今後も継続した支援の必要が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画に示したとおり、被災妊婦を対象にした面接を実施したが承諾が得られた対象者が3名であり、予定の人数より少なかった。また、支援者の助産師、ボランティアのスタッフがそれぞれ2名と3名であり、避難所での支援内容について面接により聞き取りを行うことができた。一方、当初の計画では地域の保健師も対象としていたが、実際に被災妊婦に対する支援を行った保健師が少なく対象者の確保が困難であったことから、保健師に対する面接はできなかった。 計画に沿って、花巻の支援者の方々を通しておおむね順調に研究が進んでいると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度の結果の分析をもとに地域・大学における試験的な遠隔的母子支援プログラムの実施を計画している。 平成24年度の調査結果から、被災妊婦は子育て期においてもなお、災害を受けた心身のストレスが高いことが明らかになった。地域の助産師やNPOの団体による支援も継続して行われているが、支援者側の課題として経済面、支援する場所の確保などがあり、NPOの組織においては支援方法の在り方やスタッフの確保などの課題が見えてきた。 以上のことから平成25年度は、遠隔的な支援方法の試みとしてITを活用した支援の実際を計画している。遠隔支援を試み、軌道に乗ることで場所の確保やスタッフが不足していることへの対応ができるのではないかと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の計画は、平成24年度に実施した半構造的面接の方法により、災害時から2年後の状況について聞き取りを行う予定である。聞き取りを行うにあたり、交通費と謝金が必要となる。またITを活用して、被災者、地域の支援者、大学を結び、いつでも相談事業ができる環境を整える。その環境として、パソコン周辺機器の購入が必要となる。さらに、平成24年度の成果を平成25年8月、11月に関連学会に報告する予定である。当初の予定では平成25年度は海外での発表を考えていたがエントリーに間に合わなかったため、平成26年の国際助産師連盟の大会において発表出来るよう、現在エントリーを行い結果を待っている段階である。発表ができるようになれば研究費から学会参加費、海外渡航の費用を支出する予定である。
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