研究方法は自己対照デザインで、参加家族は13家族(2グループ)、年齢は父親40.15±6.32、母親36.62±4.41、児4.62±1.33である。プログラムの目標は、第1が、子どもの障がいへの家族の認知を変化させる、第2が、家族内のコミュニケーションを促進する、第3が、夫婦の情緒的交流を促し養育や家事役割への認知を変化させる、第4が、社会資源の活用方法を習得して対外的な問題への家族の対処能力を高めるの4点である。実施は4回/1クール(1~2週間間隔)で、2クールとした。 介入方法は、家族システム論の技術を活用し、問題解決に関する情報・知識の提供、円環的質問、家族の長所の強化を行った。同時に、家族が苦しむ具体的な問題に焦点を当て、反復する連鎖を突き止めてパターン化し、問題を構成している文脈を把握した。その後、問題が生じない場合や解決した例外があれば、そこに焦点を当て、うまくいかない問題状況と比較しつつ、家族と共に解決パターンを見いだした。 プログラムの効果は、自作の「発達障がい児をもつ養育期家族の問題解決力尺度26項目(α=0.78)」で、実施前・中・直後・1ヶ月後に母親を対象として評価した。その結果、総得点の平均値は直後に上昇したが(p<.05)、1ヶ月後までは維持されなかった。下位尺度毎の平均値は「夫婦の協働関係」項目が直後に上昇し(P<.05)、3ヶ月後も維持された。「養育に対するコントロール感」項目は実施前と1ヶ月後、直後と1ヶ月後で上昇した(P<.01)。「社会資源を活用する力」項目は実施前と1ヶ月後に上昇した(P<.05)。 今回、子どもの障がいよりも、家族の苦痛の原因を生み出している文脈(相互作用、コミュニケーションの連鎖)に着目することで、コミュニケーションの悪循環に家族自身が気づき、認知を転換させ、家族自身の問題解決力が向上したと考える。
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