研究課題
本研究の目的は、マタニティ・ヨーガの短期的および長期的効果を生理指標と心理尺度により検討することである。研究対象者は、マタニティ・ヨーガ教室の参加者(ヨーガ群)およびヨーガを行わない母親教室の参加者(非ヨーガ群)である。短期的効果としてはヨーガ直後のストレス低減効果に注目し、ストレスの生理指標として唾液アミラーゼ活性(sAA)を測定した。長期的効果としては、精神的健康(GHQ)と出産のセルフエフィカシー(CSE)を質問紙により測定した。また、GHQとCSEの妊娠経過による変化を非ヨーガ群で測定した。データ収集は2012年10月から2015年3月に行った。両群ともGHQとCSEの質問紙調査を2回行い、さらにヨーガ群では研究者が教室を複数回訪問してsAAの測定をヨーガ開始前(T0)、リラックス後(T1)、瞑想後(T2)に行った。質問紙調査は、ヨーガ群では第1回調査をヨーガ教室参加開始時かその直後、第2回調査を妊娠34~35週頃の参加時に行い、非ヨーガ群では第1回調査を母親教室参加開始時に行い、その4週間以降に第2回調査を郵送法で実施した。研究計画は日本赤十字豊田看護大学における倫理審査により承認を受けた。ヨーガ群170名、非ヨーガ群286名の協力が得られた。sAAの平均値はT0からT1、T0からT2で有意に低下し、標準偏差もT0からT1、T0からT2で有意な低下または低下の傾向が認められた。これらは、ヨーガによるストレス低減効果を示すものと考えられる。非ヨーガ群では妊娠経過にともなうGHQの低下とCSEの上昇が認められ、その回帰係数で補正したヨーガ群のデータを分析に用いた。その結果、sAAの低下が大きいほどGHQの低下が大きく、ヨーガの参加回数が多くGHQの低下が大きいほどCSEが上昇することが示された。これらは、ともにヨーガの長期的効果を示すものと考えられる。