研究課題/領域番号 |
24660029
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 日本赤十字九州国際看護大学 |
研究代表者 |
佐藤 珠美 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (50274600)
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研究分担者 |
エレーラ ルルデス 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 准教授 (40597720)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 産後腱鞘炎 / ケーススタディ |
研究概要 |
平成24年度は、国内外の文献検討に加え、産後腱鞘炎を発症している4名の高年初産婦を対象に、腱鞘炎等の手や手首の問題が産後の女性の家事や育児においてどのように影響しているか、また、腱鞘炎の予防・緩和における助産師の役割を探ることを目的として、振り返りによるインタビュー調査を行った。同時に産後腱鞘炎の状況を把握するため、整形外科の診療で用いられている、手や手首の評価機能尺度であるHAND20およびPLWE日本版を使って手や手首の機能評価を行った。分析方法はケーススタディアプローチを用いた。 その結果、次のことが明らかになった。①腱鞘炎は1か月前後から発症し、痛みのピークは3か月前後にみられ、その後軽快していたが、9か月経過しても症状が持続している人がいた。②児の体重増加、家族支援の減少に伴って手や手首の痛みが増加していた。③女性たちは痛みの原因を子どもの動き、授乳のときの抱き方、搾乳、沐浴などが影響していると考えていた。④女性たちは産後腱鞘炎に対する理解が十分ではなく、症状が発症したときに悪い病気ではないかと不安や恐れを感じたりしていた。⑤女性たちは発症から時間が経過するとともに、手や手首の問題は周囲に理解されないと考え、自ら訴えることもせず、痛みに耐えて子どもに笑顔をみせるように努力していた。⑥夫や家族の支援は得られるが、適切な治療法や対処方法が少ないなかで、長期的に腱鞘炎の管理をすることの困難がみられた。⑦産後の腱鞘炎は、家事や育児など日常生活に影響を与えるだけでなく、母親としての自信に影響を与えていることが明らかになった。 以上の結果をもとに、現在、産後腱鞘炎の実態を量的に把握するための調査票を作成しプレテストを始めている。また、産後腱鞘炎と育児・家事動作との関係を明らかにするための研究の企画を研究協力者とともに行っている。これらの研究は平成25年度8月、9月を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
産後腱鞘炎の詳細な実態とその発症要因、経過を論理的に解明し、産後腱鞘炎の機能的評価尺度と具体的な看護方法を開発するために、ミックス度・メソッドを行う。当初、前向き調査を先行して行う予定であったが、研究開発における当事者参加の意義を考慮し、研究の進め方の段階を、質的調査では、産後腱鞘炎を経験している女性の後方視による調査を先行させ、次に前向き調査を行うことにした。後方視による調査を行ったことで、前向き調査を行うためのインタビューガイドの検討、動作分析の評価基準、量的調査票の枠組みなどを検討することができた。加えて、産後腱鞘炎を経験している女性からリクルート方法についての提案なども得られた。調査協力施設、研究協力者なども決まり、うち合わせも進み始めている。
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今後の研究の推進方策 |
産後腱鞘炎の実態を把握するために、妊娠中、産後1か月、産後4か月の女性800名を対象に調査票による実態調査を行う。これに加え、調査協力者のなかから、産後腱鞘炎を発症している人を募集し、産後腱鞘炎に影響している育児や家事動作の撮影を行うとともに、PRWFとHand20を用いた機能評価のほかに握力、手指や関節の可動域の測定を行う。映像の解析は人間工学の専門家を加える。また、手の機能評価については整形外科の専門医の助言を得る。 さらに、産後腱鞘炎に特異的な尺度の開発に向けた調査票の作成など準備を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は産後腱鞘炎の質的調査で前向き調査と後方視調査を並行して行う予定であったが、研究開発における当事者参加の意義を考慮し、平成24年度は産後女性の腱鞘炎の経験に関する後方視調査のみを行った。平成24年度のビデオ撮影による動作の可視化に関する研究の試行は、平成25年度に回したことで、研究費278,931円の未使用が発生した。 平成25年度は、ビデオ撮影による動作の解析、産後腱鞘炎の発症率の調査、産後腱鞘炎の機能評価を行うための調査票の開発を中心に行う。主な研究費の使用は、腱鞘炎関係図書、調査に関わる経費(打ち合わせ、データ収集のための交通費、参加者謝礼、データ整理分析のための人件費、専門家謝金)、国内外の学会発表(現在国際学会での発表の準備中)などである。
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