研究課題/領域番号 |
24660038
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
根本 清次 宮崎大学, 医学部, 教授 (40218277)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高齢者 / QOL / 排泄 |
研究概要 |
高齢者の自立度に合わせて、自己または一部介助にて脱着することができる排泄補助具の形状や素材を検討するため、素材として市販の下着を使用し、および、その中にトイレにて下水廃棄可能な吸水体を配置した排泄補助具の原型を作成した。吸水体にはイモ焼酎粕由来の粉体を用いるため、その安全性について調査を依頼し、皮膚接触に対する安全性を確認した。 作成中の排泄補助具は人体模型を用いて、身体可動域を考慮し、脱着しやすい形状を追求し、さらに作成後、研究者による模擬的な装着を試み、その感想をもとに改善を行った。これと並行して、撥水素材および吸水粉体の基本性能を調査し、同じく吸水素材の選定を行い、模擬便・模擬尿の吸収について画像解析を行なった。 以上より、最終的にトイレに座位保持の状態で自己にて、または一部介助にて排泄補助具の交換を可能にするため、ショーツの形状に2か所切れ目があるものを4種類考案した。吸水体の固定方法としては、様々なものが案出されたが、排泄補助具の生地同士が接着性、および肌に対する刺激の少ないものにするなど、新たな課題が発見された。今回は対象をトイレに座位保持が可能である高齢者として研究を進めたが、ADLの状況別に分けて作成することで、さらに高齢者の個別性に合わせた排泄補助具を作成することの必要性が予想された。すなわち高齢者の日常生活動作(ADL)や認知機能には個人差があることから個人の状況に合わせた対処が必要であることは明白である。 排便の問題は、元気な高齢者にとってはQOLを著しく障害する大きな問題である一方、特定高齢者では人間の尊厳を著しく傷つける問題である。したがって人間の尊厳を守り、かつADL・認知機能を維持できる対策が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究目標・・・内面撥水一点吸水型の排泄補助具の開発 <撥水素材および吸水粉体の基本性能を調査>撥水過程の画像解析を行ない、模擬排泄物との相互反応を確認する。⇒撥水素材を入手したが、撥水状況の正確な確認には至っていない。研究継続中である。吸水素材の選定を行い、模擬便・模擬尿の吸収について画像解析を行う。⇒顕微鏡下で吸水機構を確認し、さらに模擬水様便の固形化を確認した。 <排泄補助具の具体的形状を決定> 人体模型を用いて、身体可動域を考慮し、脱着しやすい形状を追求する。⇒ほぼ一定の形状に収束し、撥水素材を用いた製品化を目指す。模擬排泄物と人体模型を用いて新排泄補助具の性能試験を行う。⇒排泄に関する模擬実験方法を確立し、ステップ毎の性能確認試験を繰り返している。 以上より研究の達成度について評価すると、撥水の確認に手間取っているが、他の部分は予想以上に進展している部分もあり、(2)の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究目標は、おもに新排泄補助具を用いた場合の廃棄方法の開発である。このうち、年度前半には人体模型を用いた排泄実験による観察・調査・改良を引き続き行う一方、これを改良して模擬的な便、尿および、その混合物の保持と廃棄状況の改善について考察する。この際、本開発に対して、どのような衛生処理が適切であるか、廃棄・洗浄に関する付属装置の開発も合わせて検討する。 年度後期においては、排泄補助具の耐久性と性能劣化について、製品に近い形での試作品で観察をおこなう。特に、主要素材である撥水布の耐久性確認を行いたい。また装着操作の繰り返しによる性能劣化の確認も合わせて行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
試作品の完成を目指し、撥水素材および縫製用の素材を購入する。衛生管理装置の開発用部材として、小型洗浄装置(アルミス社)3台を購入する。布地の観察用顕微装置を購入する。国内学会用の旅費(日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会等)。ガラス器具等の実験器具の購入。記録素材を購入。研究協力者に対する謝金。
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