研究課題
救急外来スタッフの外傷サーベイランス能力の向上をめざし、救急に勤務する看護スタッフ、大学院生、警察、医療システム学習研究者らとシミュレーション研修を開催した。3年間で約80名の看護職を対象に児童虐待、ドメスティックバイオレンス等、家庭内の密室で起こる外傷の早期発見と治療的介入および記録の仕方等について教授した。しかし、外傷サーベイランスを立ち上げていない地域で働く看護職が、現場で実践するまでには至らなかった。一方、平成24年度から26年度に介入地域の病院5カ所で収集した約8千件の外傷サーベイランスデータを分析し、当該自治体の健康施策の取り組みを評価した。その結果、2015年2月27日にWH0セーフコミュニティ推進センターよりセーフコミュニティとしての再認証を得ることができた。本研究目的のひとつに「現行の外傷予防プログラムの効果をモニタリングし、効果がない場合はプログラムを修正する」ことを掲げたが、これまでの取り組みにより当該自治体の健康課題である指標が概ね改善したため、大きな修正はしなかった。しかし、外傷サーベイランスを行っている自治体においても、虐待や家庭内における暴力に関連する外傷のデータが収集しづらい状況があり、これらの改善に向けて第1発見者となりうる救急スタッフにむけた研修の必要性を再確認した。「外傷の観察」と「傷を観る」ことは似ていて異なるものであり、受講者アンケートより、「これまで傷の手当はしてきたが、外傷を見て、記録し、予防に活かす視点はなかった」という意見が寄せられたので、多職種協働の研修を今後も開催し、外傷予防のシステムの基盤づくりを促していきたい。
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