研究課題/領域番号 |
24660041
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研究機関 | 青森県立保健大学 |
研究代表者 |
福井 幸子 青森県立保健大学, 健康科学部, 准教授 (00325911)
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研究分担者 |
矢野 久子 名古屋市立大学, 看護学部, 教授 (00230285)
細川 満子 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (20315542)
吹田 夕起子 青森県立保健大学, 健康科学部, 講師 (50325908)
前田 ひとみ 熊本大学, その他の研究科, 教授 (90183607)
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キーワード | 訪問看護 / 診療所 / 感染予防 / 質問紙調査 / 研修会 / 針廃棄容器 |
研究概要 |
情報伝達の問題や感染対策の実態を明らかにするため,熊本県と青森県の訪問看護事業所と診療所を対象に質問紙調査を実施した. 診療所(無床,有床,在支援)で回答が得られたのは404件中108件(回収率26.7%)で,「感染対策指針がある」は92件(85.2%),「感染対策研修会を実施」84件(77.8%),「感染対策委員会がある」57件(52.8%)であった.感染対策の具体的行動10項目で,最も実施率が高かったのは「滅菌物を汚染しないよう保管」であったが,「注射時は手袋する」や「安全装置付き注射器材を使用」は,注射業務の機会があっても50%以上の診療所では実施していなかった.訪問看護指示書の交付経験がある診療所71件中,利用者の感染症が判明した時点で事業所に情報提供していたのは44件(62.0%)であった.訪問看護師が使用済み注射針等を診療所に持ち込んだ際に,廃棄方法を指導していたのは26件(36.6%)で,リキャップして持参や,持参した針廃棄容器の中身を院内廃棄物容器に移し替えるという内容があった. 訪問看護事業所で回答が得られたのは171件中65件(回収率38.0%)で,診療所との連携で感染対策上の問題が改善されたものには「針刺し防止のために必要器具が配給された」,「利用者の感染症の情報把握ができた」などがあった.しかし,現在,問題があると回答した50件の内訳には「利用者の感染症情報が不足」40件(80.0%)や「針刺し予防の器具の配給が不足」19件(38.0%)があった. 診療所・訪問看護事業所・高齢者施設の看護職・介護職を対象に,感染管理のエキスパート4名を講師とした研修会を2日間実施したが,研修会終了後のアンケート結果から,受講目的や感染対策上の問題,研修会の有効性に施設の特徴が見られた. 針廃棄容器の開発では,試作品について安全性や利便性に関する意見があった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
訪問看護事業所と連携施設との感染予防上の問題と原因を明確にするという第1研究については,質問紙調査結果から,診療所の感染対策の実態と訪問看護事業所との連携上の問題が明らかとなり,訪問看護の感染対策に影響を与えていることが示唆された.訪問看護を安全に進めていくことを訪問看護事業所の努力だけに期待するには限界があり,関連する複数の要因を整備することが必要となる.そのためには,実態を明確にすることが重要であり,要因の一つと考えられる訪問看護と連携する診療所の感染対策について実態を明らかにできたことは成果として大きい. また,診療所や訪問看護事業所,高齢者施設に勤務する看護職・介護職を対象とした研修会では,地域における感染対策の講義や針刺し予防のための演習を通して,各施設が求めている感染対策上の知識や技術,およびどのように施設内のスタッフに伝達していこうとするのか,受講生の考えや役割が把握できた.このことは,地域包括ケアで感染管理ができる人材を育成していくうえで基礎的資料ともなり得るもので,成果は大きい. さらに,訪問看護等で使用する携帯用針廃棄容器については,在宅で注射業務を実施している看護職の意見から,安全性について確信が得られたものの,利便性やコスト面で問題を提示されたことから,改良すべき点がさらに明確になり,今後の取り組みでの課題を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
第1研究の目的である「訪問看護事業所と連携施設との感染予防上の問題と原因を明確にする」を達成するために,実施した質問紙調査結果の分析を進め,診療所との連携における感染予防上の問題点と,それに関連する要因を明らかにし,有効な感染対策について検討する. また,第2研究である「感染予防に向けてソフトウエア・ハードウエアの両面から介入し,有効な方策を明らかにする」では,ソフト面からの介入として研修会を開催したが,研修会終了後に実施したアンケート結果から,診療所と訪問看護事業所,並びに高齢者施設における,研修会受講目的や活用方法,現在職場で抱えている問題にそれぞれの施設に特徴がみられたことから,今後,対象に合った有効な研修会の内容について分析をさらに進めていく. また,訪問看護や往診で使用できる,携帯可能で安全な利便性の高い針廃棄容器となるよう,針廃棄容器を取り扱っている企業のアドバイス等を得ながら,使用可能な段階まで進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
これまで,診療所と訪問看護事業所を対象とした先行研究では,質問紙調査の場合,回収率が低いものが多かったため,返信用封筒には切手を貼らず,後納手続きをとった.また,研修会で講師を依頼した感染対策のエキスパートには,研究メンバーの他,研修会開催地在住の感染症専門医と感染管理認定看護師に依頼できたため,旅費を抑えることができた. 製作した針廃棄容器の改良のために必要な物品購入に使用する.また,本研究結果を学会で発表するための旅費に使用する.
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