|
２年計画の本研究では、1年目に、①国内外の産業や他の学問分野における質管理・質評価に関する系統的文献検討、②国際標準化機構ISOでの質保証に関する専門家へヒアリング、③米国の患者単位の包括報酬制度の導入経緯と課題に関する情報収集、④訪問看護利用者のデータ提示の協力が可能な５事業所の管理者５名とケア度と報酬体系との齟齬に関する討議を重ね、訪問看護の質を反映した将来的な報酬設定に繋がる「訪問看護サービスの枠組み」を考案し、その具体的項目となる「訪問看護必要度」を測定するための項目として、A. 訪問看護の量（訪問回数、訪問時間）とB. ケアの困難度(主疾患、副疾患（認知症の有無、看護師による週４回以上のインスリン注射の必要性の有無）、時期、病期、状態（不穏・問題行動の有無、包括的呼吸器ケアの必要性の有無、状態不安定の程度）、ADL、訪問頻度、利用保険、訪問看護の加算算定状況、医療機器の装着状況、介護力、他機関・他職種との連携状況、家族調整状況、コミュニケーション上の問題の有無)を選定した。
2年目は、5事業所の18ヶ月分の全利用者データ400例分をデータセット化し、「訪問看護必要度」の選定項目の妥当性、およびこれら得点と「訪問看護への報酬」との関連を検討した。その結果、訪問看護必要度を測定する項目は10項目（①主疾患ががん・神経難病，②頻回の観察要，③ターミナル期，④要介護度4.5・日常生活自立度B.C，⑤チューブ類装着あり，⑥訪問開始30日以内，⑦訪問回数週4回以上，⑧介護力不足（独居・日中独居），⑨他職種連絡調整多い，⑩本人・家族のコンプライアンス不良）の10点満点で測定可能であること、また、現行の訪問看護報酬は、医療保険も介護保険も、訪問看護の困難度を含む必要度を反映した体系となっていないことが確認できた。今後の訪問看護必要度を考慮した報酬体系が望まれる。
|
