平成25年度は提案するプロセッサの試作と評価を主に行った.また,前年度に引き続き基本方式や要素技術を検討し,方式提案を行うとともに,シミュレータによる評価を行った.申請者を含む開発チームは現在, System Verilog で実装した FPGA 上で動作する out-of-order スーパスカラ・プロセッサ「雷上動」を開発中である.平成25年度に行った開発により,「雷上動」の out-of-order スーパスカラ・プロセッサとしての基本的な機能が完成した.「雷上動」は2命令同時フェッチ/5命令同時発行可能であり,NEON SIMD 命令(サブセット)を実行可能であるなど,商用プロセッサ ARM Cortex A9 と同等水準の構成を実装している.開発したプロセッサは,平成25年度に行われた情報処理学会主催のプロセッサ設計コンテスト「The 1st IPSJ SIG-ARC High-Performance Processor Design Contest」において優勝の成績をおさめた.また,これにより情報処理学会 コンピュータサイエンス領域奨励賞を受賞した.特筆すべきは,その他のほぼ全ての上位入賞チームが特定問題に対するアクセラレータによって性能向上を図っていたのに対し,「雷上動」ではあくまで汎用の out-of-order スーパスカラ・プロセッサのみによってより高い性能を実現したことである.これは「雷上動」の完成度の高さを証明するものであると言える.平成25年度はこの「雷上動」上において提案方式の実装を一部開始しており,平成26年度は引き続きこの開発を行っていく予定である.
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