研究概要 |
平成24年度は,提案するモビリティモデルにより,モビリティがITSネットワークとBEMSに及ぼす影響を網羅的に調査し,提案手法の有効性を確認した.一般的に,ITSネットワークを対象とした性能評価においては,目的地をランダムに選択し移動するランダムモビリティモデルに基づき,車両の移動を再現しているが,現実的なモビリティモデルではなく,性能評価に適していない.一方,実世界で取得した車両の移動軌跡も利用されるが,多くの事例を得られないため,網羅的な性能評価は困難である.本研究では,車両の動きを地点毎の車両密度として扱うことで,現実的かつ多様なモビリティモデルを生成した.さらに,移動領域全体の密度パターンを一つの状態とみなし,状態間の遷移により,車両全体の動的な変化をモデル化した.この動的なモビリティモデルを利用し,異なる複数の信号制御方針の基で,交差点におけるネットワーク遅延の性能評価を実施した.詳細な車両軌跡を利用した性能評価と比較した結果,提案手法においても同等の結果を得られ,提案手法により,実世界のモビリティ特性を損なうことなく,多様なモビリティモデルを生成できることを示した.さらに,オフィスにおける現実的な人の移動を提案方式によりモデル化し,人の動きに基づき照明及び空調機器を制御するBEMSを対象に,電力消費量とオフィス内の快適度を評価した.この手法でもITSネットワークと同様に,フロア内を小さな領域に分割し,領域毎の人の密度により,人の移動をモデル化することで,現実的な人の動きだけでなく,多様な人のモビリティを再現している.性能評価を行った結果,タスク・アンビエントの照明及び空調機器を導入するだけでなく,人の動きに合わせた詳細な制御を行うことで,快適度を損なうことなく,約3割程度電力消費量を削減できることを示した.また,所属する研究グループで開発する行動センシングシステムシミュレータHumanS上に,提案するモビリティモデルを実装し,ITSネットワークとBEMSだけでなく,位置情報を活用した様々なシステムに対し,網羅的にモビリティの影響を評価可能な基盤を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに,いくつかのネットワークシステムで評価し,提案するモビリティモデルの有用性を確認するだけでなく,提案手法を利用可能な基盤を開発及び提供することで,システムの性能評価に貢献しており,当初の計画通り,研究が進展しているといえる.
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