研究課題/領域番号 |
24680014
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
及川 靖広 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70333135)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒューマンインタフェース / 音響学 / 福祉 / 歯 / 骨導音 / 補聴 / コミュニケーションエイド / 明瞭性 |
研究概要 |
本年度は、歯ごとに加振可能なデバイス実現のための技術、その物理特性測定方法を確立した。これを用いて歯を介した骨伝導現象の解析と加振位置に関する検討、歯骨伝導デバイスを用いた音声情報取得に関する検討を行い、歯骨伝導音に関する特性の解明を目指し以下の研究を行った。 (1)歯ごとに加振可能なデバイスの製作:小型薄型フレキシブル圧電素子を歯科医療用マウスピースにはめ込み、歯型に適合可能で歯ごとに加振可能な歯骨伝導デバイスを製作した。具体的には、中切歯、犬歯、第二大臼歯を加振できるデバイスを製作、評価を加えた。その結果、圧電素子を小型化しても受聴可能であること、同デバイスを用い発話の収音が歯ごとに可能であること、石膏製の歯型に装着した場合の特性を測定することでも歯に装着した時の物理特性を推定可能であること、歯の各周波数における機械インピーダンス測定から低周波帯域に比べ高周波帯域の方が振動しにくい傾向があることを確認した。さらに波動伝搬の様子を観測するにあたり少ない観測点からの可視化手法を確立した。 (2)歯を介した骨伝導現象の解析と加振位置:製作したデバイスを用いて評価実験を行い、歯ごとの受聴特性、明瞭性の調査を行った。その結果、高周波帯域に比べ低周波帯域で聞こえが良いこと、気導音に比べ骨導音の方が明瞭性がやや低いこと、受聴特性に基づき補正を行うことで明瞭性に向上が見られること、受聴特性、明瞭度測定において三歯による差はほとんどないことが分かった。 (3)歯骨伝導デバイスを用いた音声情報取得:製作したデバイスを用いた音声の取得および取得された音声に関して分析を行った。その結果、先述の三歯すべてから明瞭な音声が取得可能であり、また約90dBの騒音下でも音声取得が可能であること、取得された音声の特徴として口腔内の奥に向かうほど高周波数成分が含まれていることなど確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度確立、取得した歯骨伝導デバイスに関する基礎的技術、知見を基に、本年度は、(1)歯ごとに加振可能なデバイスの製作、(2)歯を介した骨伝導現象の解析と加振位置に関する検討、(3)歯骨伝導デバイスを用いた音声情報取得に関する検討を行った。 その結果、歯ごとに加振可能なデバイス実現のための技術、その物理特性測定方法を確立した。さらに、これまで以上により多くの人を対象にした評価実験を行い、歯を介した骨伝導現象の解析、加振位置が受聴特性や明瞭性に及ぼす影響の調査、明瞭性向上に関する検討、歯骨伝導デバイスを用いた音声情報取得に関する調査などを実施、詳細な特徴の把握と歯骨伝導音に関するデータを収集することができた。当初予定していた実施計画をほぼ達成することができ、コミュニケーションエイドとしての発展の可能性をこれまで以上に示すことができた。さらに、波動伝搬の様子を測定する手法として、物理法則に基づく観測データの補間方法の確立を行った。これに関しては、波動伝搬過程の測定を検討していた中で生まれた成果であるが、当初予定していた以上の成果を出すことができた。 それら成果について国内学会、国際会議ICA2013で発表を行い、特にICA2013で行った発表は多くの人々に注目されマスコミ用のLay Language Paper作成の依頼を受けた。 以上、当初予定したこと以外の成果や研究成果のアピールを行うこともでき、当初の計画以上に本研究は進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、歯骨伝導デバイスに関する基礎的技術、知見を確立、獲得し、さらに歯を介した骨伝導現象の解明、加振位置に関する知見、明瞭度向上に関する知見、歯骨伝導デバイスを用いた音声情報取得に関する知見など、詳細な特徴の把握と歯骨伝導音に関するデータを収集することができた。 最終年度はこれまでの研究成果に基づき、デバイスの改良、現象の解明を引き続き行うと共にコミュニケーションエイドとして実用化及び汎用化を目指して、その性能向上と高機能化を図る。具体的には、双方向でのコミュニケーションが可能なシステムの構築、会話内容のみならず空間情報等の呈示を目指した処理の導入、空港などの公共空間において導入されているヒアリングループのような既存システムでの利用の検討などを行い、歯骨伝導でバイスのコミュニケーションエイドとしての発展の可能性を示し、新たな情報伝達経路の確立を目指す。その成果を国際会議や論文誌にて発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の成果についての発表を全て年度内に行うことはできなかったが、平成26年5月に開催される国際会議ICASSP2014にて発表することが確定している。そのための旅費を次年度に繰り越した。当初の計画以上に効率的に研究を進めることができ、主に物品費、人件費・謝金に係る支出を削減することができた。 次年度は、デバイスの改良、現象の解明を引き続き行うと共にコミュニケーションエイドとして実用化及び汎用化を目指して、その性能向上と高機能化を図る。したがって、デバイス製作と実験に必要な機材、消耗品、人件費等への支出を計画している。また、空港などの公共空間において導入されているヒアリングループのような既存システムでの利用の検討のため実証実験も計画しており、それに係る支出も想定している。さらに、最終年度であるので研究成果整理のための謝金、成果発表のための旅費、論文投稿料などの費用が必要であり、これら費用の支出を計画している。
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