コミュニケーションにおいて音声は最も重要な音情報の一つと言える。ある空間において目的の音声を取得する際、周辺騒音や残響によって質の確保が困難な場合がある。本研究ではこうした環境下においても明瞭な音声情報を得る方法として、歯を介して音声を取得する歯骨導デバイスの研究を行ってきた。 本年度は、初年度、第二年度の研究結果をもとにしてデバイスの改良と明瞭性、聴き取りやすさの向上等に関して検討を加え、コミュニケーションエイドとしての利用の可能性を探求した。具体的には、本年度はマウスピース型歯骨導デバイスの無線化等の改良を加え、装着、持ち運びが容易なシステムとした。また、複数の共振周波数を利用したアクチュエータの高能率化を実現した。このように改良した歯骨導デバイスを用いて、取得した音声について明瞭性、聴き取りやすさの調査を行った。歯骨導デバイスでは中切歯,犬歯,第二大臼歯の位置に圧電型ピックアップを配置した。それを用いて、雑音(80・90dBの2種)有無別の単音節音声明瞭度の評価実験を、20~24 歳の平均的な聴覚を持つ男女11名の被験者を対象にして行った。その結果、従来法の取得音声(Air-conducted sound)と比較して、妨害雑音を付加しない条件では10~25ポイント明瞭度が悪化したが、妨害雑音を付加した条件では3~15ポイント向上した。実環境での有効性を示すことができた。 デバイスの改良はまだ必要であると考えている。特に、マウスピース型歯骨導デバイスの無線化においてはまだ遅延が残っておりこれを解決する必要がある。
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