研究課題/領域番号 |
24680015
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐久間 淳 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90376963)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プライバシ / セキュリティ / 準同型暗号 / 差分プライバシ / 差別配慮 |
研究実績の概要 |
本課題では、情報提供者が秘密情報を保持し、情報利用者が秘密の解析条件、クエリを保持する際に、両者がこれを互いに秘密にしたままで、情報利用者の要求に基づきデータ解析を行い、実用的な時間で応答する計算基盤を構築することを目的としている。 H26年度の成果は(1)準同型暗号を用いたデータ解析のための基礎的演算の秘密計算と、(2)差分プライバシーに基づくデータ解析の出力プライバシの保護であった。 (1)では、加法的準同型暗号を用いたID空間の大きい集合の積集合プロトコルと、somewhat準同型暗号を用いた、行列の乗算の完全なアウトソース型秘密計算である。前者は、独立に構築されたデータベースの名寄せの秘密計算アルゴリズムへの応用、後者は行列積で記述されるを含むデータ解析全般を含む。(2)はデータベース問い合わせに基づく外れ値検出における差分プライバシの実現と、クラウドセンシングによって取得したデータからの経験損失最小化と、そのモデル学習における差分プライバシーの実現である。 H25年度作成のH26年度研究計画に記載した秘密計算によるロジスティック回帰は、研究の進捗はあったものの、外部発表には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模情報源におけるアウトソース型秘密計算のビルディングブロックとなる、集合演算、行列演算、文字列照合などの、研究計画書に記載した項目は概ね実現している。特に、当初の想定を超えて、somewhat準同型暗号を用いた完全な秘密計算のアウトソーシングについては研究が大きく進捗した。一方で、そのデータマイニング応用については研究が若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度は以下の項目について研究を推進する。 (1)プライバシ保護文字列操作:文字列照合やインデクシングに基づく文字列検索において、完全準同型暗号をもちいて通信が発生しない完全にアウトソーシング型の秘密計算が達成可能かどうかを検討する。 (2)プライバシ保護集合演算:プライバシ保護集合演算は古くから研究がある分野であるが、2社間の秘密計算としての定式が多く、アウトソーシングモデルでの研究はさほどすすんでいない。また、実用上はサイズの大きい集合での効率的な計算が重要であるが、従来手法はかならずしも計算効率的ではない。H27年度は完全準同型暗号を用いて、完全なアウトソーシング型の秘密集合演算を実現することを目指すとともに、暗号文へのパッキング技術を用いた効率化を目指す。 (3)プライバシ保護記述統計:準同型暗号によって暗号化されたデータについて、平均や分散等の記述統計の計算は、straightforwardに計算可能であるが、medianやmode,パーセンタイル点などの評価はかならずしもstraightforwardではない。この研究では、暗号文へのパッキング技術を用いてバッチ型比較演算を実装し、大規模なデータに対しても高速に動作する記述統計のための秘密計算を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、計算機等の物品に支出予定であったが、既存の計算資源の活用で支出額を節約することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
いまだ国内発表にとどまっている研究成果について、研究に従事する学生が研究に集中できるよう、謝金を支払い研究を加速させる。また、その成果を海外発表を行う予定であり、発表に伴う旅費に予算を支出予定である。
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