研究概要 |
本研究の目的は,Web等に存在する膨大な画像データとテキストから,それらの関係性を統計的に学習し,超多クラスの一般的物体・シーンを認識可能な知的システムを構築することにある. 現在実用化されている画像認識システムはデジカメに搭載されている顔認識システムに代表されるように一つのクラスのみに対応可能である.また一般物体認識の研究であっても平均的に100クラス,最大でも1000クラスを扱うに止まり,実世界に存在する物体・シーンの多様性に対応できているとは言い難い.本研究課題では,言葉で記述できる対象であれば認識可能とする超多クラス一般物体認識をめざし,その方法論の確立を目指す. 実世界に存在する物体は無限に存在するために,人間のように覚えるべき物体の対象を実環境から発見し,絞り込む技術は物体認識の根源的問題の一つである.環境から覚えるべき物体の対象を発見するための重要な要素技術として異常検出があげられる.しかし,人間のような移動体は個々の環境において統計的に十分な画像を集めることは難しい.また,画像比較型の異常検出では同一地点の観測のみ参照するため照明条件などの環境の変化に柔軟に対応することができない. そこで,同一地点における過去からの変化を異常検出の対象とすることにより,環境の変化に柔軟な異常検出の手法を提案した.その際に,通常データの組み合わせにより対象データの再構成が行えるかを異常の基準とする異常検出手法を導入し,移動体におけるサンプル数不足の問題の解消を試みた. さらに,画像とノイジーな複数のラベルが付与されたデータセットであったとしても適切に学習を行い,さらにデータが増え続ける場合であっても効率よく学習が可能な手法を開発した.実際に複数のデータセットを用いて従来手法よりも優れた認識精度をもつことを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では,「クラスが追加されても即時的に学習し認識結果に反映可能な高速高精度学習・認識手法の開発」を行う予定であったが,平成25年度の計画に予定していた,「膨大なデータを扱うための効率的な学習アルゴリズムの開発」の方が先にめどが立ったために,そちらを優先して研究を行った.さらに,当初の研究計画にはなかったが,無限の情報から本当に学習すべき対象を選ぶという根源的問題の重要性に焦点を当て研究を行うことができ,これは当初の計画以上に進展した部分である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,11.現在までの達成度でも述べたが,平成25年度の研究計画の一部を前倒しで実施したたために,当初平成24年度に実施計画をしていた「クラスが追加されても即時的に学習し認識結果に反映可能な高速高精度学習・認識手法の開発」を行う.また,「高い表現能力を持ち計算コストの低い画像特徴量の開発」も実施予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究計画の一部を前倒しで実施したため,平成24年度の購入物品計画が次年度にずれ込んだ.次年度は,アルゴリズムの大規模データへの拡張を行う必要があるため大規模一般概念構築装置,データ蓄積装置を購入する.また,成果の対外発表を積極的に行い,成果をアピールすることが不可欠であり,旅費,参加費,投稿料,印刷費の利用を計画している.
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