研究課題/領域番号 |
24680017
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原田 達也 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (60345113)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 画像認識 / 人工知能 / 機械学習 |
研究概要 |
認識を行うには物体間の近さを計量することが重要となるが,例えば人や動物であれば,体の動きによる変形が伴うために,変形物体間の近さを高速かつ適切に計量する必要がある.本年度は,特に変形が起こりうる物体間の類似度の計量方法の改善と高速化を行った.具体的には,物体間のマッチング問題を二次割り当て問題で定式化し,この二次割り当て問題をベクトル外挿法を用いて高速化した.また,二次割り当て問題にElastic Net制約を加えた解法を開発し,物体間マッチングの精度向上を行った.さらに,人が理解可能な教師あり学習においては,教師データ作成コスト低減が問題となる.本年度では,実環境中に存在する物体ラベルのリストのみを教師データとする弱教師付き学習により,各物体ラベルに対応した物体領域を自動的に発見する手法を提案した.また,実環境を計測した三次元データを用いて従来手法との比較実験を行い,多クラス物体のランクを考慮した評価指標における提案手法の優位性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画として,膨大なデータを扱うための効率的な学習アルゴリズムの開発,高い表現能力を持ち計算コストの低い画像特徴量の開発の2点をあげていた.効率的な学習アルゴリズムにおいては,教師データを大量に得ることは現実問題として困難である点に着目し,少ない教師データであったとしても複数の物体検出を精度よく検出可能なアルゴリズムを開発した.また,高い表現能力を持ち計算コストの低い画像特徴量の開発においては,特徴量とその計量は切っても切れない関係にあり,また,実世界における物体には変形を伴うことが本質的な問題であるということから,変形を伴う物体間の適切な計量を計算するアルゴリズムの開発に注力した.よって,当初の計画と照らし合わせて,本課題は着実に進んでいるため,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
膨大なデータや超多クラスを扱うためには,認識精度向上はもちろんのこと学習・認識時の計算効率が重要となる.データが膨大かつ超多クラスになった場合には計算オーダのみ考慮しても効率的な学習・認識システムにはならない.なぜなら,ほとんどの計算機システムではデータはハードディスクなどの外部記憶装置に保存され,それらを主メモリに転送することで学習・認識を行う.データやクラス数が膨大になると,外部記憶装置から主メモリへのロード時間に途方もない時間を費やし,また,膨大なデータは主メモリに収まらなくなる.これらがボトルネックとなり計算が不可能,もしくは計算オーダよりも桁違いに計算時間がかかる問題に陥る.真に使える超多クラス一般物体認識アルゴリズムとは,学習認識時の計算オーダ,I/O アクセス効率,できる限りデータを主メモリに納めるための圧縮技術を全て統合的に考慮したものでなければならない.そのため,今後は計算機システムも合わせた学習アルゴリズムの開発を行う.また,計量のみならず高い表現能力を持ち計算コストの低い画像特徴量の開発,分からないことが分かり人との協調により自律的に学ぶアルゴリズム開発を進めていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は変形を伴う物体間の類似度計算アルゴリズムの開発が当初の予定よりも進展した.そのため,計算機を拡張したシステム開発よりも,アルゴリズム開発に注力した.よって,本年度において,システム拡張に資金を投資するよりも,来年度にはより高性能な計算システムが安価に入手可能なことも考慮し,来年度に資金をまわし,より大規模なデータを扱えるシステム構築を可能とするため,次年度使用額が生じた. 並列計算を得意とする計算システムを購入し,超多クラス認識を実現する.
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