研究課題/領域番号 |
24680018
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 義浩 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 講師 (80456160)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | センシングデバイス・システム / 計測システム / センシング情報処理 / コンピュータビジョン / 画像情報処理 |
研究実績の概要 |
本研究では、適応的高速3次元センシングとその情報再構築のための基盤技術と新応用創出に向けて、4つのサブテーマに着手する。具体的には、A)高速適応機能を有する3次元センシング、B)高速3次元情報の統合による情報再構築、C)高速3次元センシングによる知的撮像制御、D)大型環境の瞬時スキャンである。本年度は下記の通りに実施した。 サブテーマAでは、従来の高速3次元センシングが抱えてきた動作範囲の限定や、トラッキング処理による問題を解決する手法を設計した。本手法は、3視点幾何を組み込むことで,ロバストかつ効率的な演算を可能とし、新たに提案するセグメントパターンは、高速な処理を可能としつつも、解像度向上にも寄与するものとなっている。 サブテーマBでは、1枚の画像のみを用いる能動型3次元計測における解像度の問題を解決する手法を設計した。これは、高フレームレートで撮像されたステレオ動画像において、連続するフレーム間における対象の運動が微小であるという仮定の下で、推定形状を時系列伝搬し、最小限の処理で高解像度形状を復元する手法である。また、3次元曲面を展開し、情報を再構築する手法を新たに設計した。これは、可展面構造に一様分解表現を導入することによって、任意の3次元曲面と2次元平面の写像を扱うことができる手法である。 サブテーマDでは、サブテーマAで設計した手法を、開発したウェアラブルセンシングモジュールのプロトタイプに導入し、高フレームレートでリアルタイムに3次元形状を取得可能であることを示した。次に、大型環境の瞬時スキャンに向けて、センサ、または対象物体の運動情報を取得するセンシングシステムの開発に着手した。これは、従来は画像ベースで推定的にしか得られなかった情報を、計測技術を駆使して環境に依存せず確定的に取得できるシステムの実現を目指すものである。本年度はその構想の設計までを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4つのサブテーマに対して、当初計画していた成果を順調に収めている。サブテーマA及びサブテーマBでは、適応的高速3次元センシングのための基盤技術・情報処理を網羅的に実現しつつある。さらに、サブテーマDでは、ウェアラブルタイプの3次元センシングに関して計画通りに開発を進めることができた。また、次年度以降に当初の計画以上になりうる進展として、3次元運動センシングの技術開発に新たに着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、全てのサブテーマの研究開発をさらに進めるとともに、サブテーマC)やD)の具体的な応用を実現する。 D) 高速3次元センシングによる大型環境の瞬時スキャン: 本サブテーマでは小型3次元センシングモジュールを完成させ、ウェアラブルな形態での3次元スキャンに着手する。同モジュールに組み込める技術として、前年度までに3視点拘束に基づくセグメントパターン投影型リアルタイム3次元センシングを設計している。本手法に基づき、径20mm程度で指先に装着できるモジュールの設計と開発を実施する。さらに、サブテーマB)で開発した手法を発展させて、ウェアラブル3次元モジュールが捉える時系列高速3次元情報から物体や環境の構造を復元する技術を実現する。並行して、新たなセンシングシステムとして、非接触3次元運動センシングの実現を図る。これは、剛体の運動を非接触で高速に確定的に取得できる技術を目指すものである。さらに、この3次元運動センシングと光切断型3次元センシングを統合したシステムを構築する。構築したシステムを用いて、未知の運動で高速に通過する物体の全体構造を完全に把握する機能を実現する。 C) 高速3次元センシングによる知的撮像制御: 本サブテーマでは、サブテーマD)で設計した3視点拘束に基づくセグメントパターン投影型リアルタイム3次元センシングを1,000fpsレベルの高速カメラに実装するとともに、3次元運動センシングを導入し、統合システムを構築する。本統合システムによって、知的撮像制御のための3次元把握性能を向上させる。このようなシステムから取得される高速3次元情報を用いて、知的撮像を実施するタイミングや場所を把握するための手法を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
サブテーマDにおいて開発予定だったウェアラブル3次元センシングのための小型パターンプロジェクタについて、次年度に開発を移行する計画に変更したため、次年度使用額が生じた。これは、設計途中で、サイズと輝度の性能を向上させる余地が新たに発見されたため、開発までの時間を予定よりも長く設けた方が良いと判断したことによるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
理由で述べた通り、当該次年度使用額は、設計検討した小型パターンプロジェクタの開発に充てる計画である。
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