本研究の目的は,人間の運動時の視野の揺れを補償する視線安定化機構のシステム全体像を明らかにすることである.視線安定化は,「視覚情報と前庭情報(頭部の動きの情報)の統合」および「眼球と頭部の協調運動」という特徴をもつ.このような系の理解を進めるために,実験に基づくモデル構築と同時に,ロボット実機を用いたモデル検証を実施する.平成26年度は,昨年度までに構築してきたウェアラブルなヒト眼球・頭部運動の同時運動計測装置の計測精度評価と改良,およびロボットヘッドへの視線制御モデルの実装を行い,下記の成果を得た. 1.ヒト眼球・頭部運動の同時運動計測装置の開発と計測実験 体幹に取り付けたマーカを頭部に固定したカメラで撮影する頭部運動計測系と,光学式アイマークレコーダによる眼球運動計測系を同期させたシステムを構築した.眼球2自由度,頭部3自由度の回転運動を計測できること,およびその計測精度が十分に高いことを確認した.さらに,ボールをキャッチするタスクにおいて眼球・頸部運動の同時計測を行い,眼球と頭部の協調様式を解析した. 2.ロボットヘッドへの視線制御モデルの実装 昨年度までに構築した,左右眼球にそれぞれ2自由度,頸部に回転3自由度を持つロボットヘッドに,視線制御モデルを実装した.CMOSカメラにより取得した視覚情報に基づくフィードバック制御に加えて,前庭感覚器に相当するジャイロセンサにより得られた頭部運動情報に基づくフィードフォワード制御を組み合わせることにより,視線制御の結果が改善することを実験により示した.
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