研究概要 |
平成24年度では,遠隔対話にロボットが陪席する状況,直接対話状況にロボットが参与する状況の両方について,インタラクションデザインと認知心理的な評価実験に取り組んだ. 遠隔対話にロボットが陪席する状況に関して,実験に必要な基本システムを構築した.防音室を利用し,室内に仮想的な遠隔地を作り,遠隔地の対話者(操作者)の音声を端末ロボットに搭載されたスピーカに伝送し,ロボットと対面する人(訪問者)にメッセージ発信を行えるようにするとともに,訪問者側の映像・音声をフィードバックするシステムを実現した.このシステムにおいて,端末ロボットの隣に見かけが類似した陪席ロボットを導入することの効果を検証する実験を実施し,頷くロボットを陪席させたときの方がさせなかったときに比べ,遠隔地にいる操作者と同じ部屋で話している印象をより強く与えられることが分った.これは端末ロボットに伝送される遠隔対話者の頷きを補完し,遠隔対話における効力感が促進可能であることを示す結果であると言える.また,コミュニケーションに障害を持つ自閉症児と遠隔対話できるロボットのデザインにも着手した. 直接対話状況にロボットが参与する状況に関して,見かけが類似した複数のロボットが人と対話する際に,複数のロボットの間の同調性のデザインに取り組み,ロボットに対する元々の選好性とロボット間の同調性の程度についての印象に関連があることを見出した.複数モダリティを有する陪席ロボットの行動決定のための人間の行動予測メカニズムの研究,音声による自律対話機能に関する研究,音声対話における話題認識に関する研究にも取り組み,直接対話状況のデザインのための基本機能の拡充ができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初に計画した通り,本研究課題のための遠隔対話の基本システムを構築することができた.またロボットを用いた遠隔対話において、さらにその隣に陪席するロボットを導入するという新しい形の遠隔対話システムを構築し,仮説を支持する形で,コミュニケーション支援に応用できる可能性を示すことができた.また予定通り,対面状況での複数ロボットとのインタラクションシステムも構築し,ロボット間の同調性が人間の認知に及ぼすことを観察できた.以上より,本研究課題は,おおむね順調に進展していると評価できる.
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