研究課題/領域番号 |
24680024
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 裕紀 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (80610849)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 構成論的発達科学 / 胎児 / 新生児 / 発達シミュレーション / 脳神経系モデル / 行動創発 |
研究概要 |
身体と環境との相互作用を促し身体の外部ダイナミクスを露にすると考えられる、胎児・新生児の目的のない滑らかで乱雑な運動「General Movements」をリアルな脊髄延髄系シミュレーションにより実現した。これは、Izhikevich 2008が提案している神経細胞の反応を再現するスパイキングニューロンモデルを用いて延髄系に存在しGeneral Movementsを発生させていると言われている神経振動子を模したモデルである。簡易な筋骨格モデルと結合し動作させる事で、Taga et al.1999で新生児の運動計測の解析を適用する事で、モデルが新生児のGeneral Movementsの特性を良く再現している事を示した。また、胎児モデルと接続して動作する事も確認した。この成果は、物理的制約を持つ環境と身体と運動により相互作用して発達する詳細で大規模な脳神経系モデルを開発する基礎となるものである。 内部ダイナミクスのモデルとして提案する複雑ネットワークにより接続された非線形振動子ネットワークと身体との結合系による行動創発についても検討を行った。ヒトの脳内のネットワークはスケールフリーネットワークやスモールワールドネットワーク等であることが示されているが、従来のカオス結合系としての行動創発モデルはそのような内部ネットワークがなかった。そこで、複雑ネットワークを組み込む事で創発する行動の多様性が増加することが分かった。また、ネットワークと身体の接続の結合強度をパラメータで変化させたところ多様な行動創発のためには適切な結合強度を設定しなければならない事が分かった。これは、本研究がターゲットとしている、胎児や新生児の行動が複雑な運動から単純になり、再び複雑になるというU字発達を再現する際に重要な成果である。つまり、神経系と身体系のバランスが失われたときに行動の多様性が失われると見る事ができる。このバランスの調整メカニズムの解明が次の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
身体内ダイナミクスと身体外ダイナミクスのシミュレーションにおいて当初の計画にはなかった成果を出す事ができた。 ただし、当初予定していた大規模並列脳神経系シミュレータの開発や外部ダイナミクス発達実験が不十分であるので総合的にみて、「おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの計画通り身体外ダイナミクスと身体内ダイナミクスのモデル開発を行い、その統合モデルの検討を進める。また、シミュレーションとともに実際の胎児・新生児と比較可能なシミュレーション結果の解析方法についても検討する。神経系モデルについては別のプロジェクトで進めている胎児・早産児ロボット等のハードウェア上でも動作させ、物理的な身体や環境の拘束条件が発達に与える影響についても調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度での成果を発表するため旅費が必要である。また、解析のための補助的な計算機を導入する予定である。
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