研究課題/領域番号 |
24680024
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 裕紀 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80610849)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胎児 / 新生児 / 全身筋骨格モデル / 神経系モデル / 発達シミュレーション |
研究概要 |
子宮内を含む環境とのインタラクションに必須な圧覚を検出する触覚細胞をIzhikevich 2003によるスパイキングモデルによりモデル化した。モデルのパラーメータはFreeman et al 1982で示されている生理学的なSlow adaptive型の触覚細胞の反応特性を模すようにパラメータを全探索的に調整して得られた。これにより触覚細胞の押し込み量に対する立ち上がり特性や立ち上がり後の線形な反応、周波数に対する応答が再現できた。 触覚細胞モデルについて適切に設定されたパラメータと不適切なパラメータを比較するため、先年度に開発したGeneral Movementsを発生させるスパイキングニューロンによる神経振動子モデルに接続して筋骨格モデルを運動させた。この実験により、触覚情報が適切に運動を修飾するかどうかを確かめた結果、適切なモデルのみ運動を修飾する事ができた。 100万個のスパイキングニューロンモデルをMPI(Massage Passing Interface)により並列化し、本プロジェクトで購入したブレードサーバ上での動作させ、大幅な計算速度向上を確認した。この詳細大規模な神経系モデルから自発的な脳波様の信号生成を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「2. 神経系内部のネットワーク構造の構築(内部ダイナミクス)」の研究については順調に進展しているが、「1. 感覚器と運動を介した低次神経系、身体、環境のループ構 造(外部ダイナミクス)」は進みが遅くなっている。これは、詳細大規模な神経系モデル構築に研究リソースを取られたためと認識している。次年度はバランスよく行うとともに、1.と2.の統合に支障の内容に進捗して行きたい。
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今後の研究の推進方策 |
詳細大規模な神経系モデルを用いて身体ダイナミクスの影響を極力少なくした研究として、他者間のインタラクションモデルを提案する。まず、ニューラルネットワークモデルから現れる脳波を観察し、ヒトの脳波との類似について議論する。次に、他者とのインタラクションによりどのように変化するかを観察することで、脳内の自発活動と社会的インタラクションの相互作用について検討する。この中ではまず神経系の内部ダイナミクスが(a1)複雑ネットワーク(スケールフリー性、スモールワールド性等)としての性質の違い(a2)興奮性と抑制性ニューロンの割合の違い(a3)ミエリン化の違い(神経の信号伝達速度を変化)(a4)細胞の種類の違い等によりどのように変化するかを観察する。これにより、定型発達者や自閉症とある側面で類似の脳構造を比較する事で、それらの構造的制約が脳の振る舞いにどのような影響を与えているかを考察する。その後、他者間の神経モデルが(b1)定型発達者と類似の構造で共通の場合(b2)定型発達者とそれと異なる神経構造の他者間の場合(b3)定型発達者とは異なるが共通の構造を持つ他者間の場合等により、どのように社会的インタラクションや内部ダイナミクスの振る舞いが変化するかを観察したい。 昨年度までに開発してきた脳幹と感覚器のスパイキングモデルと大規模詳細な脳モデルを統合し、全身筋骨格モデルと統合する。内部と外部のダイナミクスのインタラクションからの胎児・新生児の発達過程をモデル化するため、上記でも検討した内部ダイナミクスの違いが全身筋骨格系とインタラクションする中でSTDP則等による自己組織化によりどのような変化過程が現れるかを観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
必要な物品費等が考えていたよりも安く購入できたため、基金の使用額を抑える事ができた。 内部ダイナミクスと外部ダイナミクスの統合実験のために既存計算機のメモリの増強と解析用の計算機の購入を計画している。
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