研究概要 |
本研究は,創造的表現と鑑賞に関する身体性ダイナミクスについて,実験心理学的手法,機能的磁気共鳴画像,モーションキャプチャを用いた身体運動計測によって明らかにすることが目的である。平成24年度は,文字学習の習熟に伴って変化する脳の活動部位と解剖学的脳構造の可塑性に関する実験的研究,芸術鑑賞時の脳活動部位計測に関する実験的研究,およびモーションキャプチャによる鑑賞行動の3次元計測,さらには発話の流暢性についての実験心理学的検討,選好や社会的意思決定に関する潜在的心理過程に関する検討などについて行った。特に3次元計測研究では,モーションキャプチャ装置を本研究費により導入し,絵画鑑賞時の身体性反応を解析するシステムを構築することができ,今後,鑑賞時に感じられる印象によって身体反応がどのように異なるかを計測することができるようになった。また,同じ習熟度合いであっても異なる学習のストラテジー(身体運動を伴う学習か,伴わないか)によって主に活性化される脳部位が異なってくることが明らかになった。またそれに伴う脳の解剖学的構造にも変化がみられることが明らかになりつつある。さらに,鑑賞のより基礎的側面については社会的意思決定に伴う選好や経済活動を実験心理学的に検討し,相手に対するコミットメントが選好を形成する上で非常に重要であることが明らかになり,今後,芸術作品などを対象として表現や鑑賞行動におけるコミットメントの役割を明らかにするための基礎付けとなった。これらの成果は基本基礎心理学会などの学会やPLoS ONEなどの論文誌に成果が発表されたとともに,現在論文の作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文字を書く,絵を描くなどの様々な創造的行為に関する検討についてはまだ十分に展開ができていない。 その理由の1つは研究員の雇用が遅くなってしまったこと,さらに研究員の産休と育休によって研究が中断したことが挙げられる。しかし,鑑賞面については心理実験,脳機能実験ともに順調であり,さらに3次元計測についてもシステムが構築できたので今後の研究が展開しやすくなってきた。
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次年度の研究費の使用計画 |
学内の手続きにより研究員の任用が遅くなったのに加え,研究員の産休育休によって支払いが少なくなったこと,さらに脳機能計測用の出費が24年度は不要であったこと。しかし,25年度は学外の施設の利用や脳機能の非侵襲装置を購入する予定であり,それによって脳研究領域をより強化する。
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