研究課題/領域番号 |
24680029
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
川畑 秀明 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (70347079)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 感性 / 魅力 / 身体性 / 脳刺激法 / 美 / 注意 / 美術鑑賞 |
研究概要 |
平成25年度に展開し,得られた大きな知見は大きく2つの部分に分けることができる。 1つは美的経験や魅力の認知過程に関するものであり,美的経験や魅力の認知,さらには景観や動作の観察が注意過程を大きく変化させることを示したということである。また選好の形成が,観察者の「選択」という自発的行為に基づいて容易に変化しやすいことについても明らかにした。さらに,景観認知や手品の認知過程における注意過程や顔認知の役割についても明らかにした。これらの研究は,平成25年度において既に2篇の査読付き英語論文として発表することができ,さらに5篇の論文を英語論文として投稿中である。さらには学会抄録論文として7篇の論文として発表した。 2つ目は,tDCSという脳に微弱な電流を流すことで,特定の脳部位の活動レベルを変容させ,それによって認知過程がどのように変化するかを検討したもので,絵画画像を用いて美しい・醜いという評価系が前頭葉の活性化によってより高くなること,一方で運動野という身体性と関連する刺激部位への活動変容では美しい・醜いという評価系には影響が低いことも明らかになった。この知見は,本研究の本来の目的である美醜の評価系に身体性のダイナミクスが大きく関わるという仮説を一見否定するようでもあるが,これまでの研究では醜いという評価によって運動野の活動変化が大きくなることが示されており,そのことは「醜さ」から「運動野の活性化」へという因果関係を明らかにするものとなったことを表している。本知見は平成26年度に学会発表を行い,さらに英語論文による投稿を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
fMRIによる脳機能計測については過去のデータの分析というレベルでしか進展はないものの,認知実験レベルで多くの研究業績が得られる見込みが立ち,さらにはtDCSという電流刺激法による脳活動変容のパラダイムを用いることによって,脳の活動と美醜という感じ方の因果関係を明らかにすることができてきている。英語による査読付き論文発表2件,日本語の査読無し論文発表(学会報告論文)7件,英語による査読付き論文誌への投稿中5件があり,業績としては平成25年度で大きく飛躍することができたと自己評価できる。さらに,国内の学会・シンポジウムにおいて招待講演を5件行うことができ,アウトリーチとしても多くの知見を研究関係者や一般市民にたいしてフィードバックすることができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,26年度に得ることができたtDCS研究を英語論文として発表すること,さらには,自分の選択によって選好が形成されるとした25年度に発表した研究をさらに進展させ,他者の選択をみることでも選好が変化することを示した研究を英語論文として発表する。他者の選択の観察が自らの選好を変化させることはモデリングとも関係し,身体表象との関連性も十分に示すことができると考えられる。さらに,これまでに行った,漢字の学習において繰り返し学習の効果が脳の活動変化をどのように生み出すのかに関する研究についても,身体性と技能学習との関連で早く研究論文としてまとめる必要があると考えている。 さらに,実験的研究としては,これまでに行った美や魅力の認知の心理学実験を細かに行う。特に,美や魅力の認知が空間的注意へと与える影響についても検討していく。また,本研究費で購入したモーションキャプチャー装置を利用した身体動態と絵画鑑賞行動の関係や,評価への「飽き」や「慣れ」に関する実験的研究も進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
fMRI実験のために外部施設を使用する予定であったが,その交渉がいまくいかず実験ができなかったことに伴い,施設使用料の拠出ができなかったことが挙げられる。ただし,それに変わる脳研究を経頭蓋電流刺激(tDCS)装置を購入することで補うことはできた。 H26年度は最終年度であるため,fMRI実験の予定を拡充することなく,むしろtDCS装置を用いた脳機能抑制・促進効果により,鑑賞行動や表現行動の脳の働きを検討していく。また,心理学的実験が順調に進んでいるので,むしろこの点を拡充していく。しかしながら,実験スペースが既存の実験室では限られてしまうため,大学内のプロジェクトスペースを借用することや,研究補助者の雇用,および実験参加者の謝金に使用を切り替えて,充実した研究を展開していく。
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