研究課題/領域番号 |
24680030
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
田中 章浩 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (80396530)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 社会性 / 文化間比較 / 情動認知 / 多感覚知覚 |
研究概要 |
25年度は,以下2点のテーマに取り組んだ。 第一に,視聴覚音声情報処理プロセスのさまざまな段階における文化差を検討するため,時間的バインディング課題(顔と声に微小な時間差をつけて提示し,提示順序を判断させる課題)および音声言語知覚課題(マガーク効果を利用した音声同定課題)を用いた実験を実施した。前年度の日本人対象の実験結果を受けて,今年度はオランダ人を対象に実験をおこなった。実験の結果,音声言語知覚には日蘭の間に違いがみられるのに対し,時間的バインディングには日蘭の間に違いがみられないことが明らかとなった。これらの結果と昨年度までの成果を合わせると,視聴覚統合の初期におこなわれると想定される時間的バインディングには文化の違いは影響せず,それより高次の過程だと考えられる音声言語知覚や情動知覚のレベルにおいて,文化の違いによる影響があることが示唆される。 第二に,視聴覚音声情動認知の文化差を生み出す神経基盤を検討するため,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた実験を完了した。予備実験の結果を踏まえて最終的な実験パラメータを決定し,日本人およびオランダ人を対象とした実験をおこなった。オランダ人被験者はオランダから招聘し,生理学研究所(愛知県岡崎市)で実験を実施した。実験では視聴覚情動認知に関する2種類の課題(顔注意課題,声注意課題)を遂行中の脳活動を記録した。これまでに画像データの個人レベル解析を終えて,グループレベルの解析が進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度に予定していた心理実験と fMRI実験をすべて実施し,4編の論文発表と8件の学会発表をおこなった。fMRI実験のデータ解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り研究を推進する。具体的には,前年度に実施したfMRI実験のデータ解析を進め,視聴覚情動認知の文化差を生み出す神経基盤を同定することが目標である。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外からの被験者招聘旅費が想定していたよりも少額で済んだため。 次年度使用額については,次年度に進める予定のfMRIデータ解析の量が当初の想定以上に膨大なため,データ解析補助の人件費にあてる予定である。 26年度全体では,データ解析補助を中心とした人件費,情報収集及び成果の議論をおこなうための学会参加旅費,成果の論文投稿に要する費用,および追加実験の被験者謝金等に使用する予定である。
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