研究概要 |
短鎖RNA(miRNA)は,タンパク質へと翻訳されない短いRNAであり,他のRNAと相補鎖を形成することで,対象の機能を阻害する.今までのmiRNA研究は機能するmiRNA配列の発見が中心であったが,未だに明確な機能はほとんど分かっていない.近年,次世代シーケンサを利用し,ゲノムワイドにmiRNAが制御する遺伝子を観測する事が可能となった.本研究ではこの情報を利用することでmiRNAの機能を予測する手法を開発する.本目標に向け,特にmiRNA-遺伝子の制御関係ネットワークと,パスウエイ情報という異種ネットワークを組み合わせて解析する手法を構築する事が目標である.この目標を達成するため,平成24年度はアルゴリズムの開発・調査,及び,データの収集と予備実験を行った.アルゴリズムの開発では,提案者らの開発したアルゴリズムCOIN[CIKM2010]を利用し,高速シーケンサを用いてmiRNAターゲット探索を行うHITS-CHPの実験結果とたんぱく質相互作用ネットワークの情報を組合せて解析を行った.その結果,異なる2つのmiRNAがインシュリンや細胞周期制御に関連したネットワークを同時に制御している事が示唆される結果を得た.また,ターゲットのネットワークの形状と既に知られている遺伝子機能を調べることで,miRNAが制御する対象に,miRNAがターゲット遺伝子に結合する際に必要となるDICER1が含まれているため,対象のmiRNAの働きが強くなると,対象の遺伝子活性が落ちると同時に,miRNAの活動に必要な因子も弱まり,miRNAの活動も弱くなるというフィードバックが働いている事も示唆する結果が得られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に想定していた,新型シーケンサから得られたデータの収集,我々が開発しているアルゴリズムのそのデータへの適用が終了し,生物学的に有意義と考えられるネットワークを抽出することができている.このため,概ね順調に進行していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
既に開発したアルゴリズムが,解析に有用であることが示せている.現在の方針に則り,アルゴリズムの改良,データ収集を進め,研究を進めていく.
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