研究概要 |
当研究課題では,マイクロメートルサイズの生体分子膜の小胞にDNAやタンパク質を含む機能性分子を内包・付与して構築する「人工細胞」の研究を発展させ,生命システムの構成的理解や工学的応用に貢献することを目的とし,マイクロ流体技術を利用した非平衡人工細胞の構築と制御を行った.従来のシステムでは,人工細胞は孤立した状態で,非平衡なエネルギーの流れがなく,ダイナミックな現象を取り出すまでには至っていないため,微小流体を自在に制御できるマイクロ流体工学を駆使し,人工細胞に物質・エネルギー的な非平衡性を与え,時間的かつ空間的にダイナミックな自律的な運動が実現できる「動的人工細胞システム」を実現するための基礎技術開発を行った. まずは,マイクロ流体技術による,細胞サイズの小胞(マイクロ油中水滴,マイクロハイドロゲル粒子)の作製手法を確立した.本年度は,特に,マイクロハイドロゲル粒子をベースにした人工細胞システムの構築において大きな進展があった.マイクロ油中水滴ベースの系と比較し,マイクロハイドロゲル粒子ベースの系は,ゲルに強度があるため,空間的に制御しやすいことを利用し,異方性のある(非対称性のある)構造を付与したシステムを実現することに成功した.これにより,マイクロハイドロゲル粒子にエネルギー発生の反応を組み込むことで,回転や直進運動などの複雑な自律運動を実現するための目処が立った.まずは基本的なシステムとして球形に異方性を付与した粒子に加水分解反応を部分的に付与することに成功し,物体の自律運動を観察することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した通り,細胞サイズの人工細胞(マイクロ油中水滴型,マイクロハイドロゲル型)の作製と制御に成功し,特に,マイクロハイドロゲル型の人工細胞に関しては,形状制御や大量生産が可能な仕組の開発にも成功した.これらを利用すれば,研究計画書にある通り,研究機関内に研究が実施できると考えられる.
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