研究課題/領域番号 |
24680034
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
鈴木 章円 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(医学), 助教 (40424684)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 恐怖記憶連合 / 恐怖条件づけ文脈学習課題 / 網羅的解析 / レンチウイルス |
研究概要 |
文脈性恐怖記憶は、恐怖を感じた場所(Conditioned Stimulus, CS)と恐怖体験(Unconditioned Stimulus, US)の2つのイベントが連合(CS-US)されて初めて形成されるが、連合の分子メカニズムは不明である。主な原因として、CS記憶が形成されたか否かを判別する方法がないため、従来の研究ではCS-US連合の結果としての行動表現型しか分からず、連合そのものを解析する手段がなかったことによる。 申請者はまずCS記憶とCS-US連合記憶を分けて評価する実験の確立を試みた。そして、我々がすでに確立したCS記憶が形成されたか否かを判別する行動解析系とContext Pre-exposure facilitation effect (CPFE)と呼ばれる現象を組み合わせ、CS記憶を評価する「コンテクストに対する慣れの程度(Motility)」と一般的にマウスの恐怖記憶の度合いを評価する「マウスが恐怖を感じたときに示すFreezing」の2つの指標を測定することでCS記憶とCS-US連合記憶を分けて評価できる新規行動実験系を確立した。この新規行動実験系は、これまで恐怖条件付け記憶の形成に必要であることが報告されている多くの分子が実際にCS記憶の形成に重要なのか、またはCS-US連合そのものに重要なのかを評価する上で非常に有効なツールとなる。 一方、最初期遺伝子の1つであり神経活動依存的に発現誘導されるc-fosタンパク質は神経細胞活性化のマーカーと広く使用されている。そこで、申請者はマウスを新規行動実験系に供し、その後のC-fosタンパク質の脳内発現分布を免疫染色法により調べることでCS記憶とCS-US連合記憶、それぞれに関与する可能性のある脳領域をいくつか特定した。この中には、これまで記憶形成への関与があまり明らかではない脳領域も含まれており、この脳領域の記憶形成への関与を解析することで今後新たな知見を得られると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、計画書に示したように申請者はCS記憶とCS-US記憶を分けて評価する新規行動実験系の確立に成功している。また、CS記憶やCS-US記憶連合、それぞれに関与する可能性のある脳領域も特定しており、当初の計画通り実験は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はCatFISH法を駆使し、CS-US連合に関与する脳領域をさらに絞り込む。そして、その脳領域内に神経活動依存的にGFPを発現させるトランスジーンをウイルス感染により組み込み、行動実験後の各刺激に応答したGFP発現神経細胞をピックアップし、マイクロアレイ法によりそれぞれに記憶に応答した分子群の網羅的解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題を迅速に遂行するため、研究補助員の雇用を希望していたが、望むような研究補助員がおらず、当該助成金が生じた。次年度も引き続き研究補助員の雇用を希望し、そのために翌年度の研究費と合わせて使用する予定である。
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