研究課題/領域番号 |
24680034
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
鈴木 章円 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (40424684)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | CS-US連合 / 恐怖条件づけ文脈学習課題 / CatFISH |
研究概要 |
我々は初年度にCS記憶とCS-US連合記憶を分けて評価する新規行動実験系を確立し、CS-US連合に関わる脳領域を複数発見している。そこで昨年度はCatFISH (Cellular compartment analysis of temporal activity using fluorescence in situ hybridization)法を用いて、これらの脳領域の絞り込みを行うと共に実際に行動レベルで連合に関与するかを確認した。 最初期遺伝子の1つであるArcは刺激に対して極めて高い発現誘導性を示し、学習5分後から核内で発現し、その30分後ではその局在は細胞質へ移行する特徴を持つ。そこで、CS記憶を形成させた30分後にimmediately shock (US)を与え、その5分後のArc (activity-regulated cytoskeleton-associated protein)の局在をCatFISH法により調べた。CatFISH法に供した結果、CS-US群ではCSおよびUS、両方の情報が入力しており、連合を制御している可能性のある領域を複数発見した。この中には、これまで記憶形成への関与があまり明らかではない脳領域も含まれており、この脳領域の記憶形成への関与を解析することで今後新たな知見を得られると考えられる。 次に上記で特定した脳領域が真に連合に関与するかを評価するため、その端緒として PtA (Parietal association cortex)に着目した。PtA領域にナトリウムチャネル阻害剤であるリドカイン塩酸塩を注入し、行動実験に供した結果、PtA領域はCS-US連合を制御する脳領域であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、計画書に示したように申請者はCS記憶とCS-US記憶を分けて評価する新規行動実験系の確立に成功し、この行動実験系を用いてCS-US記憶連合に関与する可能性のある脳領域も複数発見した。さらに、その中からPtA (Parietal association cortex)はCS-US連合に関与する脳領域であることが行動レベルで明らかにすることができた。 以上のことから、上記のような区分と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はまず、候補となる他の脳領域にガイドカニューレを設置し、直接リドカイン塩酸塩を投与し、行動実験に供することで各脳領域の活性を抑えたときの連合記憶への影響を観察する。 次に、上記の結果を光遺伝学的手法により確認する。c-fos-tTAマウスはc-fos遺伝子プロモーター制御下でtTAを発現するトランスジェニックマウスである。c-fos遺伝子プロモーターは、神経活動依存的に遺伝子発現を誘導する。一方、tTAは、ドキシサイクリン(Dox)非存在下でTRE配列の下流の遺伝子発現を誘導する転写活性化因子である。これらを組み合わせたc-fos-tTAマウスでは、恐怖記憶成立時にTRE配列下流に組み込んだ遺伝子の発現を誘導できる。そこで、光遺伝学的手法を駆使し、CS-US連合記憶を制御する脳領域の行動レベルでの評価を試みる。Dox存在下でc-fos-tTAマウスの各脳領域にレンチウイルスを感染させTRE-ChR2 (またはAcrhT)-YFPをゲノムに導入する。そしてDox非存在下で行動実験系に供することで、特定脳領域内の活動依存的に活性化した神経細胞にChR2-YFPもしくはAcrhT-YFPを発現させる。そして、光照射を行い、特定神経細胞の活動を活性または抑制させ、それぞれの記憶に対する影響を観察する。 さらに、それらの領域において連合を制御する分子群の特定のためのマイクロアレイ解析を行う。以上の実験を行うことで、CS-US連合に関わる脳領域の検索および分子群の同定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
予想以上にCS-US連合に関与する脳領域が多く、それら脳領域の機能解析に時間がかかり、本来行う予定であったマイクロアレイ解析まで到達することができず、次年度へ繰り越しとなったため、次年度使用額が生じた。また、本研究課題を迅速に遂行するため、研究補助員の雇用を希望していたが、望むような研究補助員がおらず、当該助成金が生じた。 マイクロアレイ解析を行い、恐怖記憶連合に関わる分子群の網羅的解析を行う。また引き続き研究補助員の雇用を希望し、そのために翌年度の研究費と合わせて使用する予定である。
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