研究課題/領域番号 |
24680036
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
実吉 岳郎 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (00556201)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シナプス可塑性 / 長期増強 / スパイン / アクチン細胞骨格 |
研究概要 |
記憶のモデルであるシナプス長期増強現象(LTP)の成立には、シナプス形成の場であるスパインの急速な拡大とその形態の維持を伴う。ところが、LTP誘導刺激後、どのような分子機構によってスパインの形態維持がなされるのか全く不明である。本研究計画は、スパインの構造維持にアクチン骨格を制御するRhoファミリーによるポジティブフィードバック機構が関与するという仮説を光活性化蛋白質や生体蛍光イメージング、分子生物学的手法など多方面から検証する。 蛍光寿命測定用Racバイオセンサーを用いて、グルタミン酸刺激によるsLTP発現時のRacの活性をモニターし、Rac活性は刺激後30分間は持続すること、およびCaMK依存性がある事が分かった。sLTPに関わるRacの上流因子としてbeta-PIXが候補として考えられ、shRNAによりbetaPIXをノックダウンするとsLTPが阻害された。他のRacGEFについても、同様に検討し、TIAM1, Kal7ともにsLTPへの貢献がある事が分かった。RacによるRac活性へのポジティブフィードバック機構がPakを介していることを直接検証するため、光活性化型Pak(PA-Pak1)を作成を試みるが、まだ完成していない。グアニンヌクレオチド解離阻害因子(RhoGDI)はRacと結合し GEFやGAPとの相互作用を防ぐことでRacの阻害因子として働く。 RhoGDIはPakによりS101およびS174がリン酸化され、Racとの親和性が低下しRacに対する阻害効果を失うため、RhoGDIの活性はRacとRhoGDIの相互作用をモニターすることで解析可能である。ところが、RhoGDIの発現により神経細胞の形態に異常がみられたため、実験可能な発現量の検討が必要となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Racセンサーの開発に計画よりも多くの時間が取られたため、計画全体が遅延している。また、RhoGDI分子の発現によりRacセンサーの細胞内局在が変化したり、形態そのものに影響があるため、条件検討に手間取っている。一方、sLTPに関与するRacGEFについては、調べた3種類のGEFがそれぞれ形態維持に関与しているなど、順調な研究計画の進展がある部分もある。
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今後の研究の推進方策 |
RhoAの下流キナーゼであるROCK阻害剤によってsLTPの誘導が阻害される(Boschら、2014)。また、RhoA活性はRacを制御する経路が知られているため、RhoAによるsLTPおよびRac活性への関与を検討する。 RhoA活性化によるスパイン構造への影響 細胞膜透過型RhoA活性化蛋白質(cytotoxic necrotizing factorやcalpeptin, Cytoskeleton社)を添加した際のスパインの形態変化を観察する。 RhoAシグナルのスパイン構造維持への関与 RhoA経路のsLTPおよびRac活性の維持への関与を検証する。方法:GFPもしくはGFP-RacとRacバイオセンサーを共発現した神経細胞をケージドグルタミン酸刺激後5分後にROCK阻害剤GSK429286 (10 micro M, Tocris)やCell permeable Rho Inhibitor (2 microgram/mL, Cytoskeleton)で処理し、スパインの形態およびGFP-Racの蛍光寿命を解析する。また、光活性化型RacによるRhoAの活性変化を2pFLIM法でモニターする。
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