研究課題
記憶のモデルであるシナプス長期増強現象(LTP)の成立には、シナプス形成の場であるスパインの急速な拡大とその形態の維持を伴う。ところが、LTP誘導刺激後、どのような分子機構によってスパインの形態維持がなされるのか全く不明である。本研究計画は、スパインの構造維持にアクチン骨格を制御するRhoファミリーによるポジティブフィードバック機構が関与するという仮説を光活性化蛋白質や生体蛍光イメージング、分子生物学的手法など多方面から検証しようとしたものである。我々は単一スパインでのRac活性の蛍光寿命測定顕微鏡法での可視化、Rac活性化のメカニズムの解析に成功し、Rac活性は、NMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)、CaMKII、TIAM1に依存的であること、刺激後30分以上持続することを明らかにしたが、活性維持の分子メカニズムはわからなかった。当該年度中、我々はTIAM1-CaMKII相互作用の詳細な検討を行った。細胞より調製したTIAM1結合CaMKIIはカルシウム・カルモデュリンおよび自己リン酸化サイトThreonine 286のリン酸化非依存的な酵素活性を示した。また、TIAM1のアミノ酸1543-1557にCaMKIIがカルシウム・カルモデュリン依存的に結合すること、CaMKIIのNMDARのNR2Bサブユニット結合部位と高い相同性を示し、これまで知られていたNR2BによるCaMKII活性化と同じメカニズムで活性化させることがわかった。一方、TIAM1もCaMKIIとは独立にNR2Bと相互作用することもわかり、この3者によるシグナル複合体がスパインのアクチン細胞骨格を制御し構造維持する分子実体であることが強く示唆される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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