研究課題
若手研究(A)
LAMP2BやLAMP2Cが直接的なオートファジーに関与していると予測し、LAMP2BまたはLANP2Cの細胞質側配列に結合する物質を探索した。その結果、LAMP2Cの細胞質側配列がRNAに特異的に結合することを見出した。さらに、マウス脳由来単離リソソームを用いた生化学的解析および免疫電子顕微鏡法により、RNAが直接リソソームに取り込まれ分解されるという新規オートファジーシステムを発見した。我々が「RNautophagy」と名付けたこの経路はATP依存性であった。また、少なくともRNautophagyの一部においてLAMP2Cが受容体として機能することを、LAMP2Cを過剰発現させた細胞やLAMP-2欠損マウスから単離したリソソームを用いて示した。興味深いことにLAMP2Cは特に脳において発現量が高く、またグリア細胞と比べて神経細胞で非常に高く発現していた。LAMP2欠損マウスの脳内では総RNA量が野生型マウスと比較して有意に上昇していたことから、RNautophagyがin vivoで脳において機能していることが示唆された。またRNA結合蛋白質の特異的な蓄積も観察された。LAMPオルソログはリソソームを有しない酵母や植物には存在せず、線虫やショウジョウバエには1種類ずつ存在する。これらオルソログの細胞質側配列はヒトLAMPの中でLAMP2Cの細胞質側配列と最も高い相同性を示し、RNA結合能も有していた。LAMP2Cの細胞質側配列はニワトリ、マウス、ヒトで完全に保存されており、以上からRNautophagyは後生動物において保存されたシステムであることが示唆された。以上のように新規の細胞内RNA代謝システムを発見し、論文発表した。本研究成果により、RNAの異常な発現・蓄積と関わる神経疾患の病態解明や治療法開発に新たな手掛かりがもたらされることが期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
当初は、新規オートファジー経路は、RNA結合蛋白質を直接リソソームに取り込み分解する経路だと予測していた。ところが結果として、良い意味で予想と異なり、RNAを直接リソソームに取り込み分解するという新規オートファジーシステムを発見することができた。このように生命の基本的現象を新たに発見することができたことは意義深いと考える。
RNautophagyを発見したが、この詳細なメカニズムと生理的意義・病態における意義は現在不明な点が多く残されている。今後はこれらの点について解析する。
上記のように次年度からさらなる研究の発展が見込まれるため、当該助成金を繰り越した。次年度は研究費と併せ、新規RNAシステムのメカニズムと生理的意義・病態における意義の解明研究に必要な経費として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r4/index.html