昨年度までの本研究成果により、我々は新たな細胞内分解システムを見いだし、RNautophagy/DNautophagy (RDA)と名付けた。RDAにおいては、RNA/DNAがATP依存的に直接リソソームに取り込まれ、内部で分解される。またリソソーム上の1回膜貫通蛋白質であるLAMP2CがRNA/DNA受容体として機能する。RNA/DNAはチャネル蛋白質などの輸送体を介して膜通過すると考えられるが、一般的にチャネルを形成する蛋白質は複数回膜貫通蛋白質であり、LAMP2C自身がチャネルである可能性は非常に低い。本年度は、RDAにおけるRNA/DNA輸送体を探索した。その結果、トランスポーター候補分子として、SIDT2を同定し論文報告した (Aizawa et al. Autophagy. 2016)。さらに、SIDT2のノックダウン細胞を用いた結果から、RNautophagyは細胞内の恒常的RNA分解において主要経路の1つであることが強く示唆された。 一方で疾患との関連性についても解析をすすめた。筋萎縮性側索硬化症 (ALS)は運動ニューロンの変性を特徴とする致死的な神経変性疾患である。孤発性、家族性を含む多くの患者において、原因としてC9ORF72遺伝子内の非翻訳領域におけるGGGGCCリピート配列の異常伸長が特定され、異常リピート配列を有するRNAが主な病因となると考えられている。単離リソソームを用いたアッセイにより、このリピート配列がin vitroでのRDAの基質となることを見いだし論文報告した (Hase et al. Nucleic Acids Res. 2015)。
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