研究概要 |
申請者らが開発した"任意の時期に任意の行動刺激により活動した細胞集団のみに、任意の遺伝子操作を行うことが可能なトランスジェニックマウス"のシステム(Science 2007, 2008)を用いて、記憶の獲得時に活動した細胞選択的にチャネルロドプシン(ChR2)やDREADD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drug)などの神経活動操作分子が発現するマウスを作製する。これらのマウスを用いて、記憶獲得の一定期間(24時間、30日)後に、様々な脳領域の機能的細胞集団の人為的再活動操作を行い、記憶の想起を誘導することができるかを行動実験により明らかにする。その時期・脳領域と、記憶想起の関係について解析を行い、記憶情報がコードされる基本メカニズムに関して時空間的な観点を加えて考察する。 初年度は、そのために必要なtetO-ChR2Tgマウスの作製を行った。ChR2は、特定波長の光により活性化して陽イオンを透過し、発現神経細胞の脱分極を引き起こす膜タンパク質である。ChR2は様々なタイプのものが存在するため、その特性が本研究課題の目的に合致するものを検討した(Yizhar et al., Neuron 2011)。また、通常のtet0プロモーターでは、誘導されたChR2の作動期間はChR2タンパク質の半減期に依存する一時的なものである。そこで、記憶獲得時に活動した神経細胞集団においてChR2を長期的に発現させるために、Dox非依存的な変異型tTA(H100Y)を利用したポジティブフィードバックループ発現システムを導入した。ベクターの作製を行い、精製DNA断片をC57BL/6Jの受精卵に注入し、4匹のファウンダーマウスを得た。
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