遺伝子改変マウスを用いて、文脈依存的恐怖条件付け学習課題の際に活動した神経細胞群をDREADD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs)のhM3Dqタイプにより標識を行った。その後、PTSDの暴露療法のモデルと考えられる消去訓練を行い、行動学的に恐怖記憶の表出を消去した。その後、hM3Dqの特異的合成リガンドであるclozapine-N-oxide(CNO)を、マウスに投与することにより学習時に活動した神経細胞群を選択的、人為的に再活動させた。その結果、消去されていた恐怖記憶が再び誘導されることを見いだした(論文投稿中)。 この結果は、学習時に活動した脳内の一部の特定の神経細胞群の再活動が、記憶の再生に十分であることを示唆する。言い換えれば、機能的な細胞集団と記憶の因果関係を示すものとなる。 さらに、消去訓練によりいったん消失したかのように見える恐怖記憶の痕跡は、実際には完全に消去されたわけでは無く、脳内に残存していることを示唆する。
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